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第44話:剣を鍬に持ち替えて
「よし、ムサシ流開墾術、奥義……クワ!」
家の中で少女に良い格好を見せようと又八が適当な号令を飛ばす。ムサシは無言で少女の父親から渡された巨大な鍬を手に取った。
だが、作業を見守る村人たちの顔は引きつっている。「……おい、あんな化物を田に入れていいのか?」「ありゃ人間じゃねえ、泥の塊だ。土地が呪われちまうよ」
そんな不躾な声を無視してムサシが鍬を振り下ろした瞬間、大地が鳴った。岩を砕き、土を穿つ、人間業とは思えぬ怪力。
泥まみれになりながら鍬を振るい続けるムサシの体から、異様な汗が流れ落ちた。それは透明ではなく、どす黒く濁っている。かつて戦場で浴び、泥の体に染み付いていた死んだ武士たちの古びた血が大地の土に押し出されるように滲み出てきたのだ。
ムサシは無言のまま、ただ一心不乱に鍬を振り下ろし続ける。その黒い汗が地面に落ちると、ひび割れた土が不気味に赤黒く染まる。だが、次に鍬を振るい、新しい土を跳ね上げるたびに、その血は大地へと吸い込まれ少しずつ見えなくなっていった。
納屋の沢庵は、その様子を黙って見つめていた。
「死を吸った泥が、生を育む土へと変わる……壮絶な洗い流しよのう」




