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第43話:土のことわり
小次郎から逃げるように山を越えた二人の前に竹林でタケノコを掘っている沢庵がいた。
「また逃げ出すか、又八。だが、どこへ逃げても空の下よ。特に今のムサシは、中身が抜け落ちたただの空っぽの泥。器に何を注ぐかで仏にもなれば肥溜めにもなる」
「クソ坊主、縁起でもないこと言うなよ! 俺たちは今、小次郎から隠れるための静かな場所を探してるんだ」
又八の言葉を無視し、沢庵はムサシの泥の肩をパシリと叩いた。
「ムサシ、お前は柳生で剣を捨てた。だが、捨てるだけではただの無だ。土というのはな、踏まれて、こねられて、命を宿してこそ、ようやくその真価を発揮する。天下無双だの何だのというちっぽけな夢よ。そんなものよりもっと恐ろしく、尊い営みがこの先にあるぞ」
沢庵が指差した先には、干ばつでひび割れ絶望に沈む小さな村があった。
「……オレ……ナニカ……ソソグ……?」
「そうだ。その空っぽの体に何を注ぎ、何を育てるか。そこがお前の本当の戦場だ」
又八は嫌な予感がしたが村の入り口でお通に生き写しの少女が涙を流しているのを見つけ、鼻の下を伸ばした。
「……よし、ここだ。お通ちゃんにそっくりの娘さんのために、ここを俺たちの修行場としよう!」




