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第42話:時を稼ぐ嘘
「一月後だ、舟島でお主との勝負を所望する……別名、巌流島と呼ぶ者もいるがね」
小次郎の口から放たれた死刑宣告に、又八の顔色が土色に変わる。
「い、一ヶ月……!? 待て待て、それは絶対に無理だ!」
又八は小次郎の白装束を掴まんばかりの勢いで詰め寄った。
「ムサシ流では決闘はすぐには行わないのが伝統的な作法なんだ! 今の彼は、先祖代々の非常に長くて複雑な法事の真っ最中でね。終わるのに半年はかかるんだよ!」
「法事だと?」
小次郎が怪訝そうに眉を寄せると又八は、さらに畳みかける。
「そうとも! 泥の体を清め、魂を熟成させる神聖な期間だ。今斬ったら呪われるぞ。あんたみたいな天才には、最高の状態のムサシを斬ってほしいんだ。だから……半年! せめて半年は待ってくれ!」
小次郎は少しだけ考え、退屈そうに肩をすくめた。
「……半年でも一年でもいい。私は退屈を凌げればそれでいいのだ、巌流島で待つ」
「じゃあ、一年後の今日で!!」
嵐のような男が去った後、又八はその場に崩れ落ちた。
「危ねえ、死ぬところだった……一年あれば何とかなる。とりあえず、どこか人の少ない静かな村へ行こう」




