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第33話:柳生の門
「たのもう……宮本武蔵、柳生石舟斎殿に拝謁を願いたい……」
又八の声が柳生庄の門前に響く。門が開くと、そこには厳しい表情の門弟たちが並んでいた。だが、彼らの視線は又八ではなく背後の大男に釘付けになった。
「な、なんだその姿は……胸に槍が……刺さっておるぞ」
門弟の一人が声を震わせる。ムサシの胸には、宝蔵院で刺さった十文字槍が無残に突き刺さったままだ。しかも、その槍の柄には数羽の雀が止まって呑気にさえずっている。
「これぞ武蔵独自の構え、大自然の型だ! 痛みを超越し、自然と一体化した者のみが成せる業。見えるか、この小鳥たち。殺気が皆無ゆえ、彼らもここをただの古木だと思っておるのだ」
又八がハッタリをかますと門弟たちはざわついた。
「槍を刺されたまま立ち続け、小鳥を遊ばせるとは……なんと底知れぬ静寂。もしや、これこそが我が柳生が求める不動心の究極形ではないのか?」
「……ココ……カユイ……」
ムサシが泥の指で槍の根元をポリポリと掻く。その無機質な動きさえ、門弟たちの目には常人には理解し得ぬ深遠なルーティンに見えていた。




