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第3話:納屋の中の沈黙
宮本村の片隅、又八の実家の納屋には異様な熱気と土臭さが立ち込めていた。納屋の中では、ボロ布を纏った巨大な泥の塊が壁を背に微動だにせず立ち尽くしている。
「……ムサシ様、お粥を持ってきましたよ」
お通が甲斐甲斐しく納屋の戸を叩く。又八は慌てて戸口に立ちはだかり、お通から盆をひったくった。
「ダメだよお通ちゃん! 伝染るって言ったろ。ここは俺が責任を持って食べさせるから、お通ちゃんは向こうで休んでて」
又八は納屋に飛び込むと誰も見ていないのを確認して、お粥を隅の床下へと捨てた。泥の巨人が食事などするはずもない。ふと振り返ると暗闇の中でムサシの目が、混じり合った死者たちの怨念を発して不気味に赤く光っている。
「……ハラヘッタ……シニタクナイ……マダ……コロセ……」
又八は悲鳴を上げそうになりながらも必死でムサシの口を塞ぐ。
「静かにしてくれよ! お通ちゃんや村の人間にバレたら俺もお前も終わりなんだからな」
だが、村人たちの噂は止められなかった。納屋から漏れ聞こえる「コロセ……」という低い声。そして、日に日に増していく尋常ならざる血と土の匂いに村人たちは怯え始めていた。




