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第28話:泥の攪拌
「いいかムサシ、ゆっくり歩けよ! 達人が剥がれ落ちたら、俺たちのセット価格が暴落しちまうんだからな!」
又八は、ムサシの背中をペタペタと叩きながら上機嫌だった。一方、ムサシの首に右腕を埋め込まれた梅軒は屈辱と恐怖で顔を真っ赤にしている。
「貴様ら……俺を何だと思っている! 離せ、この卑劣な人さらいめ!」
「人さらいとは人聞きが悪いな。俺はプロデューサーだ。ほら梅軒、そうやって暴れるとあんたの高級そうな道着がムサシの泥と混ざって、どんどん泥だらけになっちゃうぞ」
又八の言う通りだった。梅軒が脱出しようと身をよじるたびにムサシの体から溢れる泥が梅軒の服の繊維に入り込み、二人の境界線はどんどん曖昧になっていく。
「……ココ……アツイ……」
「当たり前だ、ムサシ! 達人の体温を直接取り込んでるんだからな。贅沢な暖房だと思え!」
ムサシが歩くたびに胸に刺さった槍がシーソーのように揺れ、その振動で泥がさらに練り上げられていく。
「やめろ、混ぜるな! 俺の誇りまでドロドロに溶けていく気がする……!」
梅軒の嘆きをよそに又八は「達人入り泥人形」という、史上最もシュールな兵器を連れて山道を意気揚々と進んでいった。




