第27話:二人三脚の地獄
「離せ! この泥人形め、腕を離せと言っているんだ!」
伊賀の山道で梅軒の絶叫が虚しく響いた。右腕はムサシの首筋に深く埋まり、左手で握る鎖は胸の槍に絡まったまま。今や二人は、一本の槍を共有して抱き合う、奇怪な二人組と化していた。
「……ヌケナイ……オモイ……」
ムサシがのっそりと一歩踏み出せば、くっついた梅軒の体が宙に浮き槍の穂先にぶら下げた又八の荷物が激しく揺れる。
「やめろ! 暴れるな梅軒! 槍の先の団子が地面に落ちるだろ!」
岩陰から飛び出してきた又八が戦いの心配どころか団子の心配をして駆け寄る。
「又八と言ったか、貴様! 早くこの化け物を止めろ! 右腕がこいつの体温のない泥に飲み込まれて感覚がなくなってきた!」
「無茶言うなよ、今のムサシは自動防衛モードなんだ。あんたが鎌で斬りつけるから、泥が敵を固定しなきゃって張り切っちゃってるんだよ」
又八は密着して身動きが取れない二人を見上げ、ふと名案を思いついたような顔をした。
「待てよ……これ、梅軒をくっつけたまま柳生庄へ行けば生け捕りにした達人としてもっと高く売れるんじゃないか?」
「ふざけるな! 俺を売り飛ばす気か!」
梅軒の怒声も虚しく、又八は二人の背中をグイグイと押し無理やり山道を歩かせ始めた。




