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第24話:鎖鎌の罠
伊賀の山道は、ムサシにとって最悪のコンディションだった。ここの土は乾燥してパサパサで、どれだけ足元から泥を補充してもムサシの体には上手く馴染まないのだ。
「……ツチ……パサパサ……」
「文句を言うな! ほら、この飲みかけのお茶で練り直せ。槍がグラついてるぞ!」
又八がムサシの胸に刺さった槍の根元を必死に泥で固めていた、その時だ。
頭上の枝からジャラリと金属が擦れる嫌な音が響いた。
「何奴だ……槍を突き立てたまま、我が庭を荒らす不届き者は」
現れたのは巨大な鎖鎌を構えた男、宍戸梅軒だ。その目は、ムサシの胸に深く突き刺さったままの十文字槍を鋭く射抜いている。梅軒にしてみれば、槍を刺したまま平然と歩く大男など自分に対するこの上ない挑発に見えたのだ。
「槍使いを葬り、その得物を胸に飾って歩くか。狂っておるな。だがその槍、我が鎖鎌の餌食にしてくれる!」
「出た、鎖鎌野郎だ! おいムサシ、こいつを倒せば今度こそ三千石だぞ! 槍が抜けないなら、もう槍ごと戦え!」
又八は慌てて岩陰に隠れ、泥の巨人を戦場へと押し出した。伊賀の乾燥した空気の中、梅軒の放つ分銅が唸りを上げてムサシへと襲いかかる。




