第23話:ムサシの補修
「ちょっとムサシ、揺らすなよ! せっかく槍の穂先に吊るした団子が泥まみれになるだろ!」
伊賀へ向かう険しい山道、又八はカンカンに怒っていた。ムサシの胸に刺さったままの十文字槍は、今や完全に物干し竿扱いである。又八は、その槍の両端に自分の着替えと茶屋で買った大事な団子の包みをぶら下げていたのだ。
「……ムネ……ガ……スカスカ……」
ムサシが歩くたびに槍の重みで胸の穴が広がり、貴重な泥の体がポロポロとこぼれ落ちる。
「今直してやるから動くな! ほら、そこの水溜まりの土を寄こせ。ああ、砂利を混ぜるなよ、肌荒れするんだから!」
又八は道端の泥を素手で掬うとムサシの胸の隙間にギュウギュウと詰め込み、グラつく槍の根元を左官屋のように固め直した。
「いいか、次は伊賀の宍戸梅軒だ。槍も鎖鎌も攻略したとなれば、お前の天下無双ブランドの価値はさらに跳ね上がる。そうなりゃ俺は一生、小判の山で昼寝ができるんだ」
「……イガ……ツチ……パサパサ……」
「我慢しろよ! 山道は乾燥してるんだ。湿気が足りない分は、お茶でも買って混ぜて補強してやるから!」
強欲なプロデューサー又八は、泥だらけの手で未来の小判を数える仕草をしながら槍をアンテナのように立てた巨人を山奥へと追い立てた。




