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第22話:沢庵と対話 ー放下着ー
奈良を離れて数日。街道の茶屋で一息つこうとした又八は、縁側に座る見覚えのある背中を見つけ露骨に嫌な顔をした。
「……げっ、沢庵の坊主」
沢庵は振り返るなり、飲んでいた酒を吹き出した。
「ぶははは! しばらく見ない間に、それは新手の物干し竿か?」
目の前には胸に十文字槍を深々と刺し、そこに着替えをぶら下げたムサシが棒立ちしている。
「笑うなよ、これは宝蔵院の天才を降した証拠品だ。これを見せれば、どこかの大名家がぜひとも師範代にって千石積んでくる。俺はそのマネジメントで一生遊んで暮らすんだよ」
沢庵は笑いやめて、鋭い目で又八を射抜いた。
「又八……お前、まだムサシに戦わせているのか」
「当たり前だろ、有名な奴を全部倒して実績を作らなきゃ高く売れないじゃないか」
「……胤舜は槍を捨てて空を見たが、お前はその槍を拾って欲を膨らませている。不殺生とは、ただ殺さぬことではない。相手を傷つけようとする執着そのものを手放すことだ」
沢庵は溜息をつき、ムサシに刺さった槍を見つめた。
「その槍はお前の欲望という名の杭だ。刺したままだと、いつか身を滅ぼすぞ」
又八は、聞こえないふりをしてムサシを急かして先を急いだ。




