第14話:ムサシの食事
奈良への旅路。空腹に耐えかねた又八は、街道沿いの茶屋で足を止めた。「団子二皿! それと酒だ!」と景気よく注文したが、ふと隣のムサシを見て困り果てる。
「……なあムサシ。お前、何か食べるか? いや、泥に団子はまずいよな。泥団子になっちゃうもんな」
又八が一人で団子を頬張っているとムサシがのそりと動き出した。無機質な赤い目が足元の湿った地面をじっと見つめている。
「……ハラ……ヘッタ……」
「いや、無理に食べなくていいって……お前、胃袋とかないだろ」
次の瞬間、又八は団子を喉に詰まらせた。ムサシが丸太のような腕を地面に突き刺すと一掴みの泥を掬い上げ、そのまま筵の隙間にある口らしき窪みに放り込んだのだ。グチャリ、という生々しい咀嚼音が響く。
「……ウマイ……オカワリ……」
「地面食ってるよ! 自分の体の一部を補給してるのか、それともただの食事か!? やめろよ、店主さんが変な目で見てるだろ!」
ムサシは構わず、茶屋の裏手の水溜まりからドロドロの土を次々と胃袋らしき空洞へ流し込んでいく。
「……まあ、考えようによっては、食費がかからないからまあいっか。どこでもバイキングだな、お前は」
又八は、自分の団子の勘定を払いながら少しだけ得をしたような顔で奈良への道を急ぐのであった。




