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-98- 老後

 若いときは考えなかったことが、年を重ねると心が騒ぐようになるのが老後です。心が騒げば安らぎ気分にはなれませんが、心が騒いでも安らげる人もいますから、まあ心の内は人それぞれと言えるでしょう。

 吉崎さちは今年で九十になる田舎暮らしの老婆である。家族は全員が都会で暮らすようになり、さち一人だけが田舎に残る・・という生活を続けていた。夫の死後、昼まではメンテナンス会社の掃除婦としてパートで働く社員でもあった。メンテナンス会社は六十半ばから働き始めたさちだったが、そう大病になることもなく九十の坂にさしかかっていた。さちは最近になり、老後のことが少し気になり出していた。気がかりになれば、心の安らぎは訪れない・・としたものである。さちは今日も派遣されたとある病院から帰ると1人寂しく夕餉の準備をするのだった。上手くしたもので、さちは調理をするのが唯一の楽しみだったから、少しも苦には思っていなかった。当然、調理しているときのさちは安らぎ気分である。そんなとき、ふと、さちの心に老後の不安が訪れなくてもいいのに訪れたのである。^^ その不安は漠然としたものだったが、訪れたものは帰って下さい…とも言えず、さちは調理がその瞬間から手につかなくなった。そんなさちだったが、一晩眠るとそんな不安をすっかり忘れてしまっていた。所謂(いわゆる)、年の功というやつである。その後もさちは好きな調理を続け、安らぎの生活を続けていった。

 老いて物忘れすることで安らぎ気分になれるというお話でした。^^

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