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-83- 現実
私達が暮らす現実は、かなりシビアで油断が少しも出来ません。油断すれば安らぎ感が瞬く間に消えてしまいますから怖い世の中です。
山尾はとある中央省庁に勤務する課長である。春浅い二月初旬、春の人事異動に向け、いろいろな水面下の動きが活発になっていた。
「いやいやいや…次の部長は山尾さん、あなたでしょう…」
「去年もあなたに同じことを言われたように思うんですが…」
「そうでしたか?」
墨川は惚けるように軽く暈すと、小さく笑った。去年の今頃は、そう言われて微かに期待したしていた山尾だったのである。山尾は課長職を渡り歩いて、かれこれ十年が過ぎようとしていた。
そうこうして、内示が発令される季節を迎えた。どの職員も期待や不安に苛まれ、安らぎどころの心境ではなかった。案に相違して、山尾に希望を抱かせる話をした墨川に部長の内示が下りたのである。
『五年の墨川が…』
山尾の内心は、課長になって五年の墨川が自分を追い越して部長になる・・という現実に、心なしか虚しい気分に包まれた。
『仕方ないか…』
数日後、山尾は出世を諦めることで安らぎを取り戻した。
出世は余り深く考えない方が、安らげていいようですね。^^




