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-53- 座席

 年を重ねて老いれば立っているのが億劫になり、ついつい座りたくなります。座れればホッ!  とした気分になり、安らぎが得られる訳です。

 今年で喜寿を迎え隠居身分の小笠原は、少し離れた目的地へバスで向かった。いろいろあるだろう…と、少し早めに乗車したなが運の尽きで、通勤、通学の乗客とぶつかり、鮨詰め状態の満員バスに乗る破目に陥った。目的地までは小一時間あったから、次第に疲れが足腰に感じられるようになってきた。限界が近づいたとき、すぐ近くに座る一人の男子学生が座席からスクッ! と立ち上がった。

「どうぞっ!」

 ひと言、学生は笑顔でそう言うと、座席を小笠原に譲った。

「有難う…」

 小笠原は限界近い足腰をドスン! と座席に下ろした。その瞬間、やれやれ…という安らぎが小笠原の心に湧き起こった。小笠原は無言で学生に軽く頭(こうべ)を垂れた。

 老いれば座席に座ることが、安らぎを得るための第一条件となりますね。^^

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