-31- 雰囲気
周りを取り囲む雰囲気がよくないと安らぎは生まれませんし、消えます。
田辺は、とある公組織の一年研修に参加していた。この組織にはスパイを養成する機関があり、志願制で近畿、北陸から計24名が試験に選考され、研修を受けるというものだった。研修を経て命を果たせば組織の中堅幹部としてその後の人生を平穏に暮らせる・・という組織の規則があった。田辺は研修を終えた後、とある組織に潜入する命を公組織から指令された。不正を暴く重要な闇命令である。田辺は研修で得た種々の手練手管を使い、不正を暴こうとした。とはいえ、目立った動きをすれば他の職員に感知され、雰囲気を拙くすることになる。田辺は焦るまい…と心に言い聞かせた。当然ながら田辺には日々の安らぎは訪れなかった。幸いにも、その闇指令にはいつ迄・・という制限はなく、その点は田辺さえ焦らねば、コトをなすことが出来るようになっていた。
五年の月日が経過し、仕事にも慣れた田辺は、その期間の綻びを探し出し、雰囲気を壊すことなく、とある不正の秘密情報を入手することに成功したのである。それを命じた公組織に連絡し、潜入した組織の不正は暴かれた。コトに連座した多くの上部職員が逮捕され、田辺の命は果たされた。田辺は新しく赴任したいい雰囲気の勤務先で、中堅幹部としてやすらぎを満喫しながら勤務出来ることになった。




