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小話34 怪しげな美女とマスター
とある貿易都市の、ある酒場。
ここは酒も料理も美味いと評判で、多くの人々が訪れる。中には、冒険者や衛兵達の姿も。それだけに不思議と騒動も起こるのだが。
満月の夜。
宴で盛り上がる酒場に、珍客が現れた。緩くウェーブのかかった薄赤い髪に、猫目の茶色い瞳。体のメリハリを主張する、肌に張り付くようなYシャツとズボン。胸元の2番目くらいまでボタンを外して、男達の視線を一身に浴びていた。妖艶に笑みを浮かべたその女は、ヒールの靴で床を鳴らし、カウンター席に腰を下ろす。そして右手で頬杖をつくと、まっすぐとマスターの背中を射抜く様に見つめる。
その様を近くで見ていた男達は、美女のその行動に疑問を抱き、つられてマスターを見た。対するマスターは、なんの動きもみせず、ただひたすらに厨房で忙しく動き回っている。見つめていた美女は、唐突に口を開いた。
「相変わらず無愛想ね。久しぶり、マスター」
ーー愛しい、あなたに会えて、光栄だわ。
その言葉を聞いて、酒場は無言で叫ぶ。
『 愛しい、あなた!? 』




