小話34 怪しげな美女とマスター2
女の発言に客達の脳内は、混乱に見舞われた。現在のマスターは、独り身だ。相手が出来たところで問題は無い。けれども、どこか腑に落ちないと言うべきか。「今のままでいてほしい」という思いも強くあった。
「昔からそうね。あなたの性格は」
女はそう言うと、運ばれてきた料理に手を伸ばした。次々と口に運び、その味を堪能している。発言の真意が不明なまま、時間が経過していくので客達は気になって仕方ない。
しかし、女はそれ以上何も話すつもりがないのか、食事が終わると同時に席を立つ。代金をじゃらりとテーブルに置くと、くるりと背を向けて入り口の扉の前で止まる。
「今度は、仲間と一緒に来るわ」
そう告げて、扉に手をかけようとした。その時。
バンっ。
「さぁ! 酒飲むぞ! 飯、食うぞ。今日は戦勝祝い……ん?」
酒場にやってきたどこかの冒険者パーティが、扉を押し開けた。その際、何か変な手応えを感じて顔をあげる。恐らくリーダー格の男は目の前の顔をうつむかせた女の姿を見て、急速に体が冷えていくのを感じた。
「え? あの、すみません……ぐはっ」
謝罪を申し出るリーダー格の男に、女は鋭い拳打を男の腹に叩き込む。余程の衝撃を受けたのか、男は腹を抱えた男は、震える足で2、3歩後ずさると崩折れるように床に倒れた。
『えぇぇ!?』
急展開の衝撃に、周囲は硬直。
そんな中、顔を真っ赤に染め上げた女が涙目になりながら、店を出ていく。
衝撃の冷めやらぬ酒場で、全員の視線はマスターへと向けられた。彼らの心は、こう叫んでいた。
『ま、マスターの知り合いにまともな奴いねぇー』と。




