小話26 マスターへの幻想2
「うわぁー! マスターは何をやらかしたんだ!?」
若い常連客の男が、嘆きながら顔を伏せる。
「お前は一体、何を騒いんでいるんだ?」
「イテッ!?」
嘆く男の脳天に、拳を叩き込まれた。嘆いていた男は頭を両手で抱え、痛みをこらえる。拳を入れた張本人、男の友人は呆れた表情を浮かべて、酒を口に運ぶ。嘆いていた男は店に現れた衛兵2人とマスターを見ながら、頬杖をつく。
「聞いてくれ。我が友よ」
「 ……あんまり、聞きたくはないが」
急に語り出した男に、友人は相槌を打ちながらその話を聞いた。話を聞いている内に、友人の眉間は険しくなっていき、最後には飲む気も失せて再度、男に拳を叩き込む。語った男曰く、「マスターにこんな疑いあったら、やばいよな」とか「そしたら、この店はどうなる!?」とか、終わりの無い想像を脳内展開していたらしい。
まぁ、実際に衛兵の2人組の酒場におり、マスターをどこかへ連れて行こうとしている。けれどもそれは、お尋ね者を探していた衛兵達がマスターなら知っているのでは、と聞きに来ただけだ。決して罪人としてでは無い。
「変なイメージで遊んでいると、いつか痛い目見るぞ?」
「大丈夫だって!」
拳を叩き込まれたにもかかわらず、すぐに復活を果たす姿に、友人は何も言えなくなった。
「さて、僕はそろそろ仕事戻るかな。えっと、金は」
男は勘定を払うために、財布を探す。しかし、パカリと開いた袋の中には何も入っていない。
「 …… 」
「おい、どうした?」
「我が友よ! 金、貸してくれ!」
「はぁ!? 嫌だよそんなの。自分でなんとかしろ」
「そう言わず! このままじゃ、僕”無銭飲食”に」
男が何か言いかけたところで、目の前に大きな影が立つ。男はその気配に肩を震わせ、顔をあげた。
「マ、マスター」
「無銭飲食は、許さん」
「ひっ!?」
ーー
男はその後、マスターの威圧に気圧され、1週間寝込んでしまったという。




