小話25 召喚3
光る陣から、何かが生まれようとした時だった。
「これ以上、許さない」
突風と共に紫髪の少女が現れ、レイピアを手に突進していく。
「く!? 間に合わない」
その速さは魔法が発動するよりも、レイピアの切っ先を魔石に突き刺す。助走と速さにより、威力のこもった一撃は魔石を砕く。破片を撒き散らし、制御を失った陣が宙に溶け込む様に消えていった。
「お、俺様の魔石が!」
「自業自得。この店から出てって」
まっすぐと男を視線で射抜き、少女は告げる。男は気圧され、思わず1、2歩後ずさった。そんな逃げ腰の自分に腹が立って、小さく舌打ち。周囲を見渡せば、誰もが敵意を持って男を睨む。
「これが難攻不落の酒場か。納得だ」
「難攻不落、ね。それが流れている噂かい?」
少女の横に並ぶ様に、冒険者の男が立つ。その手には武器ではなく、ジョッキを持ち楽しそうに男を見た。
「残念ながら、噂の正体は俺達じゃない」
冒険者の男はそう言うと、自分の背後に目を向ける。そこには仏頂面のマスターが。だが普段とは違い、その瞳には怒気を孕んでいる様だ。一歩進むごとに、圧力が増していく。
「ここは、酒と料理を楽しむ場所」
「え?」
近づいてくるマスターに恐怖を覚え、強気だった態度がなりを潜めた。レイピア少女の比ではない。実力の差が圧倒している。
「楽しめないやつは、出て行け!」
「ひっ!?」
その激しい叱責の声に驚き、男は慌てて出ていく。その背を見送り、マスターは踵を返す。戻っていくマスターを見て、誰もが思う。
『マスター、本当に恐ぇ!!』と。




