小話25 召喚2
そろそろ帰宅しようかと席を立つ常連客達。しかし、彼らは腰を浮かしたまま突然の衝撃を受けた。酒場の入り口が「何か」に木っ端微塵に砕かれ、扉が木の残骸と成り果てる。異常事態に腕に覚えのある客達は、酔いが覚め、各々の武器を構えた。
「こんな夜遅くに、一体なんだってんだ!?」
鋭く入り口の外を睨みつけ、常連の男が叫ぶ。その叫びに反応して、黒い毛並みに犬歯をのぞかせた「何か」。いやヘルハウンドと呼ばれる犬が男に飛びつく。
「前にも見た事ある犬っころだな、ちくしょう!」
男は切っ先を返し、剣の柄頭で犬を吹き飛ばす。犬はよほど衝撃が強かったのか、壁にぶつかった後動かなくなった。おそらく死んではいない。頭に衝撃を受けて、気を失ったのだろう。普段であればモンスターなんて、剣で切り捨ててしまうところだ。互いの生死をかけた戦いだ。甘さを見せた方が死ぬ。しかし、ここは酒場。しかもマスターによって、流血沙汰は禁止されている。いくら相手がモンスターとて、倒して終わりでは済まない。
犬はしばらくして青い粒子を身に纏って消えていく。その光景は通常のモンスターには、起こり得ない。この何も残らない消え方に、男は覚えがあった。
「召喚魔法、か」
「おお、正解だ」
言葉を肯定する様に入り口からローブの男が現れる。その顔はフードで隠され、容姿は定かではない。男性ではあろうが、どこか怪しい雰囲気を漂わせる。ローブ姿の男の手には、先端に緑色の石、魔石と呼ばれる石をはめた杖が握られていた。
「この俺様のしもべを、いともたやすく屠るとは」
「勘違いすんな! 殺してねぇよ!!」
「モンスターにも、慈悲を与えると? ふははっ! 噂通りの店だ」
「……噂通り?」
ローブ男の言葉に疑問を覚え、つぶやく。しかし、ローブ男は笑みを浮かべるだけで、杖の先を前方に構えた。その先から複雑な文字を描いた陣が構築される。
「さて、次は何を呼び出そうか? くくっ」




