閑話 常連客のつぶやき4
とある貿易都市の、ある酒場。
ここは酒も料理も美味いと評判で、多くの人々がやってくる。それだけに酒場では、自然と騒動が起こるのだが。
「「はぁー」」
夕方の酒場に2人男女がため息がついた。
どちらも冒険者であり、この酒場の常連客である。男は麦酒のジョッキを手にし、女は果実酒を飲み干す。そんな2人のため息の理由は、この酒場の「過去の記憶」にあった。顔をテーブルへうち付け、こもった声で呟く。
「「気が休まらない」」
「 …… 」
マスターは何も言わず、作業を続ける。
男は億劫そうに顔あげて、天井の板を見つめた。
「喧嘩や戦闘はご法度だけど、大ごとにならないだけで時たまあるし。ここに来る子供は、なんか怖ぇ奴ばっかだし」
女も同じ事を思い出したのか、頬杖をついて口を開く。
「恐れを知らない、ガキばっかだわ」
女はそう言ってある1つのテーブルに目を止めた。カウンターから少し離れた場所。壁に絵画の飾られ、その丁度下にあるテーブル席。そこには以前、女よりも長く通っていた常連客の老人がいた。
「そういえば、あの爺さん。いつ頃だったか来なくなったわね」
「そうだな。あの爺さんがいたら、ガキ共はビビって逃げ出すだろうな!」
普段は好々爺然とした老人だが、一度怒ると手がつけられない。特に騒動を起こす子供には、厳しい一面がある。叱りつける老人の姿が頭に浮かび、苦笑する2人。
「なんか、あいてぇな」
「あの爺さんのニマニマした笑みも、たまにはいいわね」
2人は酒を追加で注文。再度、ぐいっと一気に仰ぐ。
騒動に巻き込まれる2人だが、それでもこの酒場が好きだ。
だから、気は休まらなくてもここに足を運んでしまうのだろう。そんな事を思いながら、2人はジョッキを傾けるのだった。




