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小話⑥マスターとメイド
貿易都市にある、とある酒場。
ここでは酒も料理も美味いと評判で多くの人々が集まる。それだけに、この酒場では良くも悪くも騒動が起こるのだが……
「マスター様、お久しぶりです」
そいつの来訪は、唐突だった。多くの人で賑わい、酒や料理を楽しんでいた酒場は一瞬にして沈黙に覆われる。誰もが今、店に入って来た存在に釘付けになっていた。
「こんな遠方にいらっしゃるとは、予想外でしたよ」
その人物は、黒ブーツの踵を鳴らしながら、店内を進む。
空色の長髪に、翡翠色の瞳。無表情ながらも整った顔立ち。すらっとした細身。その身を包む服装は、膝下の長さに調整された深い藍色のスカート。そしてその上に、白いフリルがついたエプロン。その姿は貴族に従事する「メイド」。そのものである。
男性客達はその美貌と主に胸元に視線を置き、女性客達は酒場にメイドという不自然さと警戒心を抱く。しかし「メイド」は、それら一切合切を取り合わず、ただまっすぐとマスターを見ていた。
「注文は?」
当の本人であるマスターは、周囲の状況を気にする事なく、普段通りに要望を聞く。
その時だった。
「死んでください。マスター様」
そう言って、彼女は懐から抜く手も見せず、2本のナイフを打ち出したのだ。
突然の来訪者……メイド襲撃に、マスターはどうする?!




