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異世界酒場小話集  作者: 愛組
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小話⑤幽霊騒動!? 3

 激しい音が聞こえたと同時、客達は驚いてマスターに目を向けた。基本、無口で仏頂面のマスターだが、仕事はしっかりとこなしていた。ミス自体が珍しく、何かを落として割ってしまうなんて、勤務中になかったはず。マスターは、片付けのため、店の奥に消える。残されたのは、木の器を持ったまま、驚愕している女の姿だけだ。

「おい、どうした?」

 男が状況がわからず、女に説明を求める。すると女はカウンターの奥、その床を凝視して答えた。


「今、勝手にお酒のボトルが落下したのよ」

『は?』


 その回答に、男を含む誰もが疑問を浮かべた。だが女に嘘をついている様子はない。それどころか、自身も信じられないモノを見た様な雰囲気だ。男は自分の目で確かめるべく、席を立つ。


「ちょっと俺もみ」



 ドポッ ……ドポッ。



 と今度はカウンター上の水樽から、大量の水が溢れ出す。流れ出た水は、そのまま床を水浸しにした。

「な! 私、さっきちゃんと栓を閉めたわよ!」

 慌てて椅子から降り、水樽の栓を閉め直す。しかし、謎の現象は次から次へと増えていく。天井から吊り下げた電球が1人でに揺れ、椅子が音をたて床に横倒しに。更に、窓際の花瓶が落下。

「ちょっとこれ、魔法の類じゃないの?」

「そんな事しねーよ! バレたらマスターに殺されるぞ!?」

 少し前までの平和はなんだったのか。酒場はパニックに陥った。途中、酒場に飲みに来た客も、中の異常性を見て踵を返してしまう。そんな中。



「一体、何の騒ぎだ?」

 そこへ救いの声が現れた。


『マスター!!』


 全員の心の声が一致する。ほうきを持ったマスターは状況を確認する為、辺りを見渡す。そして何故か宙の一点をじーっと見つめた。「え、何かいる?」と不安を抱く。


「お前が倉庫の窓を割った犯人だな?」

 マスターが強い口調で言うと、空間の一部が小さく揺らぎ、何者かが姿を現す。

 赤い髪に手のひら程の小さな体。そして背に生える2対の羽。


「「ピクシー!?」」


 そこには妖精の一種、いたずらっ子のピクシーがいた。声を出さずにクスクスと笑っている。光の鱗粉で尾を引きつつ、スイッとマスターに近づく。その後、何を思ったのか「ぽふっ」とマスターの頭の上に着陸。仏頂面のマスターの頭に、小さなピクシー。


『ぐふっ』


 なんとも微笑ましい光景に、客達全員、必死に笑いを噛み殺す。当の本人達は置いてけぼりを食らって、互いに視線を交わしあう。


 こうして、騒動は無事鎮静化したのだった。



ーーその後。

 ピクシーがマスター達と別れると、「不審事件」はパタリとやんだ。その為、事件は犯人不明のまま、幕を閉じる。尚、ピクシーは逸れた仲間と再会し、無事故郷の森に帰ったという。


 


騒動は無事解決! 私も頭に乗せてみたい。

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