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11-3 クズ共

 孵化・条件付けセンター、孵化管理部門。


 オットーたちは、物資管理部門との連絡廊下から逃げているところだった。


 既に一般職員たちは各食堂に集められ、保護・軟禁されている。だが、ハッキングで停止させられる戦闘ロボットの範囲には限りがあり、まだ戦いは続きそうだった。

 物資管理部門の3番倉庫は、密かな武器の搬入口になっている。そこからもうすぐ、武器と弾丸の補給部隊が帰ってくる――はずだった。


『――っ!!クソッ!ジークもやられた!』


『誰か!誰かあいつ引っ張ってこい!』


『いや無理だろもう!』


『痛ぇっ!いてえよぉっ!』


『撤退だ!コンテナに隠れながら移動しろっ!』


『クソッ、血がっ、血が止まんねぇ!誰か助け――』


 無数の爆発と共に、通信の阿鼻叫喚が途切れる。


『!!!』



 オットーはコンテナの裏から、硝煙の向こうから来る大きな人のような影を見た。


 クソッ!あんなのどこから来たんだよ……! 


 半自律型戦闘ロボ――頭部がない代わりに胸の部分がコクピットになっており、工事や搬入作業で用いられる人型の重機によく似ている。

 だが、明らかにそのような無害なロボットとは別物だ。右腕は変形してガトリング砲になっており、背中には小型ミサイルを搭載している。


『こちら死神ハロス第4小隊、既に戦闘を開始――』


 オットーはロボットから響く音声を聴き、歯を鳴らした。

 「死神ハロス」とは、こう言った非常事態にのみ駆り出される殺戮専門の特殊部隊だ。報告によると今、ジオフロンティア中の反乱軍が、彼らに苦しめられているらしい。

 戦闘経験など一切ないオットーたちに、勝てるはずもない……まして敵は、あの凶悪なロボットに乗っているのだ。

 オットーは残ったわずかな仲間と共に、廊下へと逃げ込んだ――そのすぐ後方の壁に、無数の銃弾が穴を空ける。


『アハハハハハハハハッ!ざまあみろ!生産性のないクズどもが!』


 一体のロボットの拡声器から、聞き覚えのある声が聞こえてきた。


 ……ガブリイル?なんであいつがいるんだよ!


 ガブリイルは捕虜にされまいと、反乱軍の目を逃れて逃げ回っていた。そして密かに死神の小隊と合流し、戦闘ロボの確保を達成していたのだ。


『おい。素人があまり勝手に暴れるなよ!』


『あ……も、申し訳ありません!』


 ガブリイルは隠れる場所が無かったので、自衛も兼ねて乗せてもらっているのだ。あまり調子に乗ってはいけない。

 だが、このフラストレーションを抑え込んでおくなど、できそうになかった。


 クズ共め!徹底的にぶっ潰してやる!


 この一か月、ガブリイルはずっと功績に見合わない憂き目を見続けてきた。

 あろうことか、自分がいない間にスイレンとキャサリンが逆上し、出世プランが台無しになったのだ!

 挙句、調査委員会は迷走し、監視課は業務停止状態。ガブリイルは完全に干されていた。

 ガブリイルが何をしたというのか――?いや、何も失敗していない。むしろ、自分が監視していれば防げていたに決まっている。他の監視員たちが無能だっただけだ。


 特にブォエンっ、あのクソ無能インチキカリスマ野郎が…………!!!そもそもあんな奴が、僕の代わりなんてできる訳なかったんだ!


 ブォエンは偉そうな顔をしていながら、監視員としての技量はガブリイルの部下とどっこいだったようだ。そうでなければ、スイレン達の異常に気づかないはずがない。

 ガブリイルの必死の調査にもかかわらずブォエンは、「我関せず」とでもいうような陳述を繰り返して研究員たちから不信の目を向けられ続け、終いには管理委員会から呼び出しを食らう始末。

 残されたガブリイルにはもはや、何の立場も残っていない――場合によっては「連帯責任」で、監視課ごとまとめて弾劾の対象になるかもしれない。


 挙句……挙句、なんだって?革命だと!?

 

 いい加減にしろよ!どいつもこいつも!僕のキャリアの邪魔ばかりしやがってっ!


 今の体制を壊されて、出世の可能性を永遠に閉ざされるなどあってはならない。いや、むしろガブリイルはこの機会を利用して、鎮圧に参加したことを功績として刻もうともくろんでいた。

 圧倒的な攻撃力で、一方的にクズどもを蹂躙する――この仕事も、なかなか悪くない。


 一方のオットー達は、隠れる場所が見つかるまでとにかく走り続けるしかない。

 ただでさえ縦にも横にも広いセンター内で、特に搬入経路は逃げ場が無い。道すがら、コンテナや培養ポッドの運搬車を隠れ蓑にするしかなかった。


「はあっ、はあっ…………!」


 オットーの後ろの曲がり角で、また何人かが被弾して倒れる声が聞こえた。だが、振り向いている暇はない。


 ――そんな時、不意に通信機から連絡が届いた。


『こちら指揮官エリック!たった今、作戦本部から全体に通告があった!遂に委員会本部の占拠に成功したとよ!』


「えっ…………!?」


 マジで!?そんなあっさり――


『これで半分は勝ったも同然だとよ……!後は各々が戦って、生き残るだけだ!一つ一つの戦いは無理に勝とうとしなくていい!ヤバかったら少しずつ退却しろ!敵が降伏するまで耐えればいいんだ!』


 降伏するまで、耐える…………確かにそれが、最善だろう。そしてもちろん、勝利が近づいたことは喜ばしいことだ。

 だが、オットーは激しい違和感を覚えていた。


 なんで、委員会本部だけが、そんなに簡単に……?死神たちはまだ、そこら中で暴れてるじゃないか。



 そもそも作戦を聞いた時から、戦力を投入するバランスがおかしいとは思っていた。

 まさか、大規模にハッキングしたはずの戦闘ロボットも、ぜんぶ委員会本部に……?それじゃ本末転倒だろ。


 優先順位が、おかしい。


 委員会を一時的に乗っ取ろうが、政府を戦闘が続行不可能な状態にまで追い込まなければ、勝利することはできない。……いずれ物量で押し切られる。


 作戦本部は、何を考えているのだろうか。オットーたちの下にも後援が来るとは聞いていたが、本当に間に合うのか?


 オットーは、ものすごく嫌な予感がしていた。


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