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11-2 「ヘレン」

 ヘレンはもはや冷笑を隠さずに、上目づかいでカミラを見遣る。


「それなのに今まで、私に合わせて仲良くしてくれてたんですかぁ?カミラさんは『優しい』んですね。……キャサリンさんもそうでした、アハハ……。」 


 ようやくヘレンは、カミラ達が見たかった姿を見せてくれた……だが、覚悟はしていたものの、予想以上に不愉快な性格のようだ。


「……だったらその優しさで、そっとしておいてくれればよかったのに。そのまま仲良しを続ければいいのに……どうしてそれを、壊しちゃうの?『自由』って何ですか?そんなめんどくさいもの、必要ないじゃない……。」


「……どうして、そう思うのかしら?」


「だってっ!今のままだったら、やればいいことが全部決まってるんだからさっ、分かりやすくていいじゃん!言われた通りにしてれば褒めてもらえるんだし、みんな喧嘩しないで仲良くできるし!そうでしょ?カミラさんだってそのおかげで、一人ぼっちにならないで済んだでしょ。」


 一番、痛いところを突いて来た――カミラは唇を噛んだ。コハルは彼女の方を気遣わしげに見る。


 ヘレンには申し訳ないと思っている。今まで本当は許してもらえていなかったからと言って、彼女を責めることはできない。


 そう、でも。だからこそ…………。


「カミラ、ちゃん――」「待って。」


 カミラはコハルをさえぎる。


「……そう、その通りよ。それに私は、あれのおかげで点数へのこだわりが少なくなった……私に期待されてたのは、『自己中心だった奴が改心して良い仲間になる』展開だったそうよ。まさにその通りだわ……そしてその結果、洗脳から抜け出しやすくなった。皮肉よね……もちろん、あなたと友達になって、点数が上がりやすくなったことも気づいてたわ。……でもそれ以上に、誰かと仲良くできたことがうれしかった。」


 カミラは少し黙って、ヘレンの顔を見る。


「本当よ。私は、あなたに好意を向けてもらえて嬉しかった……あなたは私に好意があるって、思い込もうとしてただけかもしれないけど。でも、そんなことどっちでもいいわ。」


「…………ああ、はい。ですよね。どっちでもいいんですよねっ。じゃあいいじゃないですか別にっ、『ヘレンはカミラさんのことが好き』ってことで——」


「違うっ!『どっちでもいい』って言うのはっ――私が、あなたのことを好きだから!」


 カミラは顔を赤くしながら言った。


「…………は?」


 ヘレンの引き攣った笑顔が、困惑によってさらに歪む。笑い飛ばそうとして、でもできない。何を言われたのか、よくわからない……そんな顔だった。


「あなたが私のことを嫌いでも、別にいいの。あなたのことは、と、友達だと思ってる、から。」



「嫌われても、いい……?本気で、言ってるんですか…………。」


「……まあ、嫌ではあるけど…………あ、もちろんあの時のことは、もう一度謝るわ――ごめんなさい。……あなたさえよければ、また仲良くして欲しいの。」


「嘘っ!嘘だ!ぜんっぜんわかんないし……!な、何?ツンデレぶってるの?え?」


 ヘレンは頭を抱える。


「私は今までのあなたを知ってるから……何が嘘で本当だったかは、わからないけれど。あなたがヘレンであることに変わりはないわ。」


「嘘だって、思ってるなら……何を根拠に、『好き』だなんていうの!?」


「根拠、って…………ああ、もしかしてあなた……ていうかあなたも、『褒められないといけない』って、思ってたのね。褒められるようなことをしないと、好きになってもらえない、って…………。」


「っ~~…………!!知ったようなこと、言わないでください…………。」


 そう言いながらも、ヘレンは明らかにはっとした顔をしていた。


「そんなこと、考えたことないですよ……分かんないんです、私には、そんな難しいこと、考えられないんですよっ…………!」


 ヘレンの表情は固まっていたが、その目は壊れた機械のように、勝手に涙を流していた。


「…………じゃあ、一緒に考えようよ。私も、ヘレンちゃんのことが好きだよ……今までの知ってるヘレンちゃんも好きだけど。どんな風に違うヘレンちゃんでも、友達でいたいの。」


「…………そんなの、できる訳ないですよっ……()()()()()()()は、すごく、嫌な奴だから……どうせっ、喧嘩になるよ……。」


「っ……じゃあいいわ!しましょうよ、喧嘩。友達なら、それくらい普通でしょっ?」


「……………………あ。」


 カミラのその一言で、ヘレンは抵抗するのをあきらめたようだった――ようやく泣き顔らしい泣き顔で、声を上げながら泣き始める。


「うぅっ……なんなのっ、もう…………そんなので良い、なんて…………なんでもっと早、ぐっ、教えで、ぐれなかったの、だれもぉっ!!!うわあああぁぁぁぁぁんっ!」


「はいはい、よしよし。全くもう…………。」


 カミラとコハルは一緒に立ち上がって、ヘレンの肩を抱く。

 コハルは嬉しくもあったが、不安にもなった。


 ……先輩とキャサリンちゃんも、こんな風にできるかな…………。


 その時、カミラのコンソールが通知音を立てた。


――『地下の作戦は予定通り進んでいます。私もそろそろ次の段階に動きますので、あなた達も準備を。』


 コハルとカミラは、顔を見合わせてうなずいた。


午後7時台にあと2話投稿します。

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