11-1 作戦当日
「――という訳で、今ジオフロンティアは戦争中よ……多分。そして、あと二時間後には私たちも計画を実行するわ。」
「……えぇえっ!?ちょ、ちょっと待ってください……何言ってるのか、全然わかんないです…………。」
ヘレンは頭を抱える。ここは彼女の部屋――彼女と向かい合ってベッドの上に、コハルとカミラが座っている。
「信じられないかもしれないけど、全て今言った通りよ。」
「……あ、いや、そうじゃ、無くて……ほんとに、わかんないんですよぉ。だって、ヘレン、頭悪いから——」
ヘラヘラと笑うヘレンを見て、カミラは眉をひそめた。コハルも違和感を感じる。
『頭悪い』?今まで、そこまで自分を卑下したことなかったじゃない――
「…………いいえ、ヘレン。わからないはずないわ。できる限り分かりやすい言葉で説明したつもりよ……それとももしかして、わざと言ってるのかしら?」
「……わざと、って?」
ヘレンはきょとん、と首をかしげる。だが、その割に表情が伴っていない。
もちろん、動揺し困惑しているのは本当だろう。だが、カミラに返事をするまでに、明らかに何かを考えているような間が生じていた。
「……カウンセリングで、そうしなさい、って言われたんじゃないの?できるだけおバカなヘレンを演じなさい、って。」
ヘレンはあの時ステージ上で、一瞬でも「ヘレンらしくない」行動を取ったのだ。「本」の人物曰く、カウンセリングで再教育を受けた可能性が高いと言う。
「……そんなこと、なかったですよっ?何言ってるんですか?さっきからカミラさん、変ですっ。」
ヘレンは息を荒らげながら、頭を片手で押さえる――頭痛がするのだろうか。
「変なのはあなたの方よ。……いえ、私たちみんなが変ね。さっき言った通り、ドールたちはみんな洗脳されているの。『自分らしさ』を競って、成績を上げるように。そこから解放されるために、私たちは今から戦うの。」
「っ~~~~~~…………!!なん、で………………………………なんで、そんなこと、言うんですか……。」
ヘレンは下を向きながら、低い声でつぶやいた。
「私、全然わかんないです……どうしてそんな話、しないといけないんですか。」
「……へ、ヘレンちゃんも解放されて、自由になって欲しいからだよ……!」
コハルは思わず声を大きくする。
「……何言ってるのか、わかりません。ヘレンはずっと自由ですよ?誰かに命令なんてされてません。」
……明らかに苛立っている調子だった。やはり、かなり自分の気持ちに自覚的なのだろう。カミラ達は少し安心した。
「……ヘレン、もうやめて。もうそんなことする必要ないから。お願いだから、正直に話して欲しいの。」
「ヘレンは嘘なんかついてません。馬鹿だから嘘もつけないんです。」
ヘレンは目を合わせないまま言う――わずかに、冷たい微笑を浮かべながら。
「ヘレンっ!いい加減にして……!あなた、やっぱりまだ……私のこと、嫌いなんじゃないの……?」
「…………………………なんだ。気づいてたんだ。」
ヘレンはぼそり、とつぶやいた。




