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5-1 みんなで一つに

「よっしゃぁ!文化祭きたあぁぁ!!!みんな、気合入れて行こうぜェっ!」


 キャサリンは教室の中心で、拳を振り上げて叫んだ。


「ちょっと、静かにしなさいよ……!っていうか、今はまだ話し合いを始める段階じゃない。そんなに意気込まなくても……。」


 クラス代表のカミラがたしなめるが、キャサリンの大声は止まらない。


「一年でこの行事が一番山場なんだろぉっ!?アタシ、これを学園生活で一番楽しみにしてたんだよ!」


「ああ、私も同じ~。」


 良くも悪くも一学期の成績が開示され、夏の部活動の大会も終わった。

 一年生の各々が早くも様々なドラマを経て、様々な想いを抱える中――学園生活を盛り上げる更なる行事の開催が、ほとんど間を空けずに告げられた。


 旧世界の主に日本国の伝統を元にした、生徒による生徒のための、学校全体を挙げての一大イベント――文化祭。

 生徒会、部活動、クラス――あらゆる単位の活動が結集され、学問の場である学園を、三日間だけ夢と狂騒の世界に作り変える。


「取り敢えずみんな、共有ノートに思いつく限り意見を書き込んで頂戴。一通り意見が出たら、順番に自分が出した意見についてプレゼンしてもらうから、それまでに近くの人と話し合っておいて。」


 クラスの話し合いではクラス委員たちのみが前に出て場を仕切る。副担任はこういう場合、教室の隅でスリープモードになっている。生徒たちの自主性を守るためだ。

 担任のP達は滅多に姿を現さないが、神出鬼没だ。ときどき個々の生徒たちが悩んでいるときに突然姿を現し、アドバイスをして去って行くらしい。既に何人かは一学期の内にそういうイベントを経たらしいが、コハルは噂に聞いただけだった。


「――お化け屋敷が良いな~、民俗学の授業で見て、すっごい面白そうだなって!」


「え~、でもそれ、他のクラスも思いついてそうじゃない?」


「う~ん、そうだけど。なんかこう言うのって、被っちゃうのは当たり前らしいよ。だからさ、被っちゃったとしても負けないように、思いっきり怖くすればいいんだよ!」


「恐くするって……でも、ちゃんと可愛さとのバランスとるのが難しいよね。ほら、少女文化学で習ったでしょ……?」


「――ゲームセンターとかどうかな!メイメイさん、機械作るの得意でしょ?」


「え、ぼ、ボク?えっとまぁ……ものによるけど……確かにモグラたたきくらいなら、設計図検索すればできるか……。」


 見ての通り、全ての生徒が目を輝かせて待ち望んでいる――そして、それ以上に全ての視聴者が熱狂するイベントでもある。


 もっとも、外部から一般人にんげんが物理的に入場することはない。模擬店に訪れるのは他の二校のドールたち、および「模擬」客のアンドロイドたちだ。


 ……実は、視聴者たちが遠隔AR技術を利用しそれらの機体に「乗って」来ているのだが、生徒たちは知る由もない。


 個々のイベントに参加するにも、個々の店舗に入場するのにも、それぞれ現実の通貨が支払われている。

 最も盛大な行事では、最も盛大に金が動く――学園の運営者たちにとっても一大イベントだ。


 彼女たちの青春のきらめきが、SIRIESの利益を生む――こうして直接的・間接的にあらゆる形で、ドールは人類の発展に貢献しているのである。


 1年C組では様々な意見が飛び交い、冗談と真剣さが入り混じった活発な議論がなされた。

 内向的な人の控え目な意見が出ると、他の人がそれをフォローし、キャサリンなどが話を大げさにする。それをカミラ達クラス委員が突っ込みながら修正し、最終的には実現性とエンタメ性のバランスを取った案が残っていく。

 ……それにしても、キャサリンがいつもにも増してやかましい。コハルですら少し当惑するほどだった。


 見かけ上、意見の多様性がこの上なく守られている空間だ――だが実際、議論は表層的なものであり、マッチポンプですらある。

 最初に全員のコンソールに流された、口に出してはいけないルール――できる限り、衣装コスプレを伴う企画を選ぶこと。その条件に適さない意見は、ごく自然に賛意を失っていく。

 そして、もし企画で役割がない人員がいるのであれば、その者はステージショーの個人ステージに参加することが求められる。


 衣装、パフォーマンス、注目――これらの要素がひとつもなければ、大幅な成績ロスとなる。


 もっとも、他のドールとの()()()()()が生じない限り、相対評価の要素は少ない。決して、争うことなどない。

 生徒たちはこの祝祭を仲間と協力し、本気で楽しむつもりだ……だがそれと同時に、個人個人が本気で挑むべき戦いでもある。

 

割と続けて読んでくださっている方も多いようなので、よろしければ現時点での感想・ご批判等頂けると幸いです!

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