4-4 そんな風に触られたら
「うつぶせになって。」
「は、はい……。」
コハルはおずおずと台の上のスプリングに体をうずめる。
どうしようどうしようどうしよう…………!
最近ようやく、スイレンに体を触れられても恥ずかしくなくなってきたところだというのに、さすがにこれはハードルが高すぎた。
そうは言っても、このシチュエーションは既にAIで予習済みだ。先輩からのマッサージの申し出は、一度遠慮しつつも最終的には断ってはいけないことになっている。
「痛たっ……!ちょっ、すいません、もうちょっと優しく……!」
足の裏を思い切り押され、コハルは悶絶する。羞恥心も一瞬で吹き飛んだ。
「はいはい。ちょっと我慢してね……。」
「痛っ、いぃっ……。っ、んんっ…………!」
コハルは歯を食いしばりながら涙をこらえる。
しかし、足の裏が終わった後はそれほど苦痛でもなくなった。スイレンの細い指が、足首をなぞってふくらはぎに登ってくる。
「……………………。」
膨らんだ部分からその周辺へ。やさしく指圧ともみしごきを繰り返しながら、少しずつ太腿に移っていく。
もちろん気持ち良いのだが、なんというのか、今まであまり感じたことのないような気持ちよさも混ざっていた。どちらかと言うと、あまり落ち着かない、ゾワゾワとした感覚……。コハルはなんとなく、自分が危うい状態にある気がしていた。
「っ……あ、そこはっ……そこはあんまり強く、触らないでください……。」
足の付け根にスイレンの指先が触れ、コハルの腰がピクリと跳ねる。
「あ、ごめんなさい……。」
そう言ってスイレンは少し力を緩める。
ま、待って……そんな風に優しく触られると、むしろ……!
「っ~~……!あ、あの、もう脚は大丈夫、です……!」
「あっ…………そう、ね……。」
荒い息を吐くコハルの赤い顔を見て、スイレンは気まずそうに手を離した。
やっぱり……今日は私、いつもと違って、変なのかな……。
今日は練習中も、スイレンを見ているとどうも、変な気持ちになってしまうことが多かった。見てはいけないと思っていても、どうしても視線が彼女の肢体に吸い寄せられてしまうのだ。
これは別に、そう言うのじゃ、ないし……。気にしなければ、大丈夫……!気にしなければ……!
そう思えば思うほど、緊張で心拍数が上がり、体がどんどん熱くなる。感覚が更に鋭敏になる。そして結局、一秒後にやってくるスイレンの指先に過剰に反応してしまう。
「っ!!」
スイレンに腰を触れられ、再びコハルの体は大きく跳ねた。
…………あ、やばい。
どうしよう……。バレませんように、バレませんように…………。
コハルはぎゅっと目を閉じ、腰回りを這い回るスイレンの手に感覚をゆだねた。スプリングに顔をうずめて、荒い息を押さえつける。もはやそうする以外、仕方が無かった――
「コ、コハル?大丈夫……?」
明らかに様子がおかしいコハルを見て、スイレンが不審に思う。
「っ!あ、別に――あ痛たたたっ……!」
その時スイレンの手がタイミングよく、例の痛めていた背中の筋肉に触れた。
「ああ、さっきからそんなに痛かったの?なら我慢しなくてもいいのに……。」
「あははっ……すいません…………。」
よかった、誤魔化せた…………。
早く下着ごと着替えないと――そう思っていたとき、近くの台に乗せていたコンソールが、ピコンッ、と通知音を立てた。
――なぜか10点も加点されていた。




