4-3 ワタシにできること
「はあ、疲れたぁ~……。」
コハルは休憩ゾーンで息をつき、ウォーターサーバーから水分を摂る。
「痛たっ……大丈夫かな、これ……。」
入部前から覚悟していたことではあったが、本格的に毎日練習をやるようになってからは、体中、今まで経験したことが無いような部位まで筋肉痛になっていた。
最近、少し無理をしすぎているのだろうか。特に背中が、特定の方向に曲げるとピリッと嫌な痛みが走るようになっていた。
たくさん練習すればそう言うこともなくなるかと思っていたが、コハルらしい体格を保つためには、筋肉をつけすぎてしまってもいけない。でも、夏の大会ももうすぐだし、スイレンの応援と指導に答えたいと言う思いも強い。……なかなか難しいものだ。
それでもコハルは、どうしても必要以上に頑張ってしまう。
本人は、「スイレンに追いつくため」と自分に言い聞かせ続けている――だがなんとなく、それ以外にも理由があるような気がしていた。
最近なんとなく、「今のままではいけない」、と言う焦燥感のようなものがあった。与えらたノルマや期待された成長の範囲に収まっていることに、何と言うのか不安のようなものを覚えていた。
不安?不安って……何が?
(私は、もっと変わらないといけないんじゃないか。)
別に、退学になる心配なんて少しもないし……スイレン先輩に嫌われてる、っていう訳でもないし……誰かと喧嘩してる訳でもないし……部活の友達とも、C組のみんなとも、エリーちゃんとも、普通に仲良くしてるし……。
(もっと、何かもっと、私にできることがあるんじゃないか――)
……まあ、気のせいかな。
「ていうか、今日はなんかっ、体も変に熱いし……。」
コハルは腰をひねりながら、おっとっと、とよろめく。バランスもうまく取れない。
今日は練習中、何だかよく変な気分になっていた……生理前だからだろうか?体調管理には気を付けているし、コンソールのAIも特に何も言って来なかったのだが……。
「ちょっとコハル、大丈夫?」
部屋に入ってきたスイレンが、よろめくコハルを庇おうと駆け寄る。
「だ、大丈夫です。ちょっと疲れてるだけで……。」
「大丈夫じゃないわよ……あなた今日ずっと背中痛そうにしてたじゃない。飛ぶときの動きにも明らかに支障出てるわよ。」
「うぅ……実は最近ずっと痛くて……背中だけじゃなくて、全身もう石みたいでぇ……。」
「はあ、しょうがないわね……ちょっと、そこに横になって。」
そう言ってスイレンは、何列も並んだマッサージ台の手前を指で指した。
「えっ……え、そ、そんなわざわざ、先輩にやってもらうなんて……。」
コハルは遠慮の気持ちもあったが、それ以上に恥ずかしかった。
「いいから。マッサージの仕方も、あなたたちが次の世代に継承するのよ?この際体で覚えておきなさい。」
え、えぇぇっ~~~!




