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4-1  「コハル」

 コハルはいつも通り、けたたましい目覚ましの音で目を開けた。


 コンソールを開き、昨日までの自分の「振り返り」と「今日のアドバイス」に目を通す。そして生体組織の安定のため、サーバーから配給された錠剤を飲む――今日はいつもと少し違う色の薬が入っていた。


 ドールたちは毎日その日を最高に自分らしく生きるために、AIから様々なアドバイスを受け取る。アドバイスは友達に対する言葉かけを変えたり、ある時刻にある場所に移動して運気を高めたりするなど、その日によってさまざまだ。

 全てのドールはこのアドバイスを毎朝、ひとつ残らず覚えて欠かさず行わなくてはならない。でないと成績が下がってしまう――下がりすぎたら、退学だ。もっとも、そんなことになるドールは1000人に一人もいないらしいが。


 フェーゲライン愛嬢希望学園では、毎日毎分或いは毎秒単位で成績が動き、常にコンソールを通してフィードバックされる。

 そのため、友達との何気ない会話でも、常に()()()()()、あるいは()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 保育園の時から訓練されてきたこととは言え、多くの友達の間で、状況に合わせて最適な行動を選ぶのはなかなか難しい。


 しかし、コハルも少しずつ慣れてきたところだ。

 入学してからそろそろ4か月も経つし、困っているときはコンソールにヒントが表示される。

 この前カミラが授業から抜け出してしまった時も、「みんなで励ましに行きましょう」と言うメッセージが出たおかげで、どうするべきかすぐに分かった。


 でも……と、服を着替えながらまた考える。


 だったらもっといつもヒントをいっぱい出して欲しいのに……。


 例えばそもそも、カミラとキャサリンが最初に喧嘩をした時。

 コハルはどんな言葉をかければいいかわからず、おろおろするばかりだった。それともあの時は、それが()()()()()()正しかったのだろうか?


 コハルはいつも、少し引っ込み思案で言葉がおぼつかない。それは欠点でもあるが、「主張が控えめで優しい」、と言う魅力的な個性でもある。その個性が守られてさえいれば、それでいいのか?


 でも、もっと何か……控え目なままでも、工夫して気持ちを言葉にできないかな……。ていうか、ヒントなしでも、友達が困ってたら、助けなきゃいけないんじゃないかな……?


 コハルはティータイムなどの暇な時間に、よくそんなことを考える。しかし、そんな思考には何の意味もない。ぼんやりするのはコハルの良くない癖だ。


 一瞬一瞬、今の行動に集中しなくてはならない。


 いつも通り、自分らしく、決まった通りに。

 

 そのために役に立ちもしないことを考えても、意味はない。

 コハルお得意の独り言にすらその思考は表されない――「今のコハルらしさ」に当てはめて意味づけできない、ただのノイズに過ぎないからだ。

 そう、ただのノイズ――それはコハルと言うドールの一部などではない。

 存在しない戯言。考えていないのと同じことだ。

 コハルにとっての「コハル」とは、いつも「コハルは○○なんだよね」と口に出して言う内容が全てなのだから。

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