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異世界転生したのにバグでハーレムが構築できません!〜全部アイツらのせいだ〜  作者: 沼口ちるの


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8/10

勇者レオンの敗北と、降り注ぐ『愛』の雨

「……なんだ、この臭いは」


王都のメインストリート。パトロール中だった勇者レオンは、鼻を突く異臭に顔をしかめた。

ドブと、腐った肉と、薬品が混ざったような――いつかゴミ捨て場で嗅いだ、あの気味の悪い生き物と同じ臭い。

だが、あの時とは濃度が桁違いだ。


ズズン……ッ! ズズン……ッ!


地鳴りと共に、王都を囲む巨大な城壁が、紙クズのように内側へ向かって弾け飛んだ。

舞い上がる土煙の中から姿を現したのは、山のように巨大な赤黒い肉塊。無数の腕が蠢き、黄色い膿を垂れ流しながら、ズリズリと王都へ侵入してくる。


「キャアアアアアッ!?」

「魔、魔物だぁぁぁ!」


逃げ惑う民衆。その一人が転び、巨大な肉塊から零れ落ちたスライム状のヘドロを浴びてしまった。


「あああっ! 溶け、ヒィィィ……え?」


ヘドロを浴びた男は、痛みに顔を歪めるどころか、恍惚とした表情を浮かべて立ち上がった。その腕は奇妙にねじ曲がり、余分な関節が三つほど増えている。

「あぁ……治る……痛みが、消える……。魔王様の、愛が……」

男は完全に正気を失い、肉塊に向かって祈りを捧げ始めた。


「な、なんだあの禍々しいオーラは……! レオン様、危険です!」

「あれはただの魔物じゃない! 存在そのものが世界を汚染しています!」


女騎士とシスターが武器を構え、レオンを庇うように前に出る。

レオンは聖剣を引き抜き、純白のオーラを纏った。


「下がっていてくれ、二人とも。僕が浄化する! ――『極大聖閃ホーリー・ノヴァ』!!」


レオンの剣から放たれた、街一つを包み込むほどの神聖な光の奔流。

それが巨大な肉塊に直撃し――ジュウウウッ! とけたたましい音を立てて肉を焼き焦がした。

効いている。誰もがそう確信した。


『アァ……キモチ、イイ……』


肉塊の奥底から、脳を直接かき回すような、ねっとりとした声が響いた。


『もっと、痛くして……。そしたら、もっと気持ちよく治せるから……。レオン……お前も、俺の愛で、満たしてやる……』


「なっ……僕のフルパワーの聖魔法が、通じない……!?」


レオンの端正な顔が、初めて驚愕に歪む。

聖属性の魔法は『邪悪』を討つものだ。しかし、今のタカシに『悪意』は一切ない。あるのは、自分が魔女にされたことと同じことをしてあげたいという、純度100%の『善意と慈愛』なのだ。

悪意なき狂気に、正義の剣は通じない。


『ほら……おいで、俺の、ヒロインたち……』


「きゃあっ!?」

「いやあっ! 触らないでぇぇっ!」


肉塊から伸びた無数の触手が、悲鳴を上げる女騎士とシスターの手足を絡め取り、空高く吊り上げた。

かつて、少し触れようとしただけで汚物を見るような目を向けた女たち。

だが今、彼女たちは恐怖と絶望に染まった顔で、タカシの触手の中で無様に震えている。


『フヒッ……可愛いねぇ。今、魔女様がしてくれたみたいに……腕をもいで、内臓を溶かして、綺麗に治してあげるからねぇ……』


「やめろぉぉぉっ! 彼女たちを離せ!!」

レオンが絶叫し、聖剣を振りかざして飛びかかる。


『レオンも……順番待ち、しててね……』


ドゴォォォォンッ!!


タカシの巨大な腕の一振りが、ハエを叩き落とすようにレオンを地面に叩きつけた。

あの完璧だった聖鎧はひしゃげ、自慢のイケメンフェイスは血と泥に塗れ、無様に地面を這いつくばる。


『さぁ……世界中のみんなで……最高にキモチイイ、お遊戯会を始めよう……!』


王都の空が、絶望のドス黒い瘴気に覆われていく。

チート勇者も、高潔なヒロインも、この底なしの狂気の前ではただのオモチャに過ぎない。

王都陥落。それは、終わりのない『愛と解剖の無限地獄』の始まりを告げる鐘の音だった。

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