無限の死と、モルモットの到達点
「ぎゃああああああああっ!! 痛い! 熱い! 溶けるぅぅぅぅ!!」
石造りの地下室に、タカシの絶叫が響き渡る。
魔女が嬉々として振りかけた『青い液体』により、タカシの皮膚は泡を吹いて溶け落ち、筋肉が剥き出しになっていく。
「ひっひっひ! いいねぇ、最高の悲鳴だ! さて、死ぬ前に『再生の秘薬』を……と」
「がはっ……ごほっ……! ふ、ふざけんな……! なんで俺が……! あいつらが、幼馴染が俺を振らなきゃ……! レオンが、女神が俺を助けていれば……! 全部、全部あいつらのせいだ……!!」
全身の肉が再生する激痛の中で、タカシは血反吐を吐きながら世界を呪った。
一回目の死(未遂)。タカシの心はまだ、他責思考と被害妄想の塊だった。
――それから、どれだけの時間が経っただろうか。
【実験開始から、100回目の死】
「……ゆる、して……。俺が悪かった……もう、チートもハーレムもいらない……日本に帰して……かあちゃん……」
タカシはプライドを完全に捨て、魔女のローブにすがりついて泣き叫んでいた。誰かのせいにする余裕すらなくなり、ただただ許しを乞うだけの哀れな生き物になり下がった。
しかし魔女は「泣き顔もいいデータになるねぇ」と笑いながら、タカシの口に内臓を直接爆破する魔法薬を流し込んだ。
【実験開始から、1,000回目の死】
「ア……ガ……ァ……」
声帯はすでに何度も焼け焦げ、まともな悲鳴すら出ない。
タカシの脳は、限界を超えた痛みを処理しきれず、ショートし始めていた。幼馴染の顔も、レオンへの憎しみも、自分が「タカシ」という名前だったことすら、ドロドロに溶けて記憶から抜け落ちていく。
【実験開始から、10,000回目の死】
「…………」
タカシの肉体が真っ二つに切断され、再びくっつく。
もう、痛覚はとうにイカれていた。むしろ、再生する時の細胞が蠢く熱が『ご褒美』のようにすら感じられ始めていた。
自我は完全に崩壊し、「自分は壊され、治されるだけの肉の塊である」という真理に到達したのだ。
「さて、今日の実験はここまでにしておこうかね。お前さんも、ずいぶん長持ちするようになったじゃないか」
魔女が血まみれのメスを置き、タカシの頭を撫でる。
かつて、女騎士やシスターに触れようとして虫ケラのように拒絶されたその身。女神にすら汚物と罵られたその命。
だが今、この薄暗い地下室で、狂った魔女だけが自分に触れ、「必要」としてくれている。
「あ……ぁ……」
タカシ――いや、かつてタカシだった肉の塊は、虚ろな目を魔女に向け、原型を留めていない顔でニチャァ……と笑った。
「もっと……もっと、壊して……。魔女様……俺、役立ってる、でしょ……?」
「ひっひっひ、ああ。お前は最高のモルモットだよ」
チートで無双し、美女を侍らせる。そんなちっぽけな妄想に囚われていた変態キモオタは、無限の死と再生の果てに、すべてのプライドと人間性を削ぎ落とした。
そして、狂気という名の完全なる『安らぎ』を手に入れたのだ。
誰にも愛されなかった男は、永遠にモルモットとして飼い殺されるこの地下室で、かつての彼が夢見たどんなハーレムよりも、満たされた表情を浮かべていた。




