俺の出番が奪われた!? 輝くイケメン勇者とゴミ捨て場の俺
「……ふざけんなよ! なんで俺様がこんな目に!」
地下牢にすら「臭いが染み付く」という理由で入牢を拒否されたタカシは、王都のさらに外れにある巨大なゴミ捨て場にポイ捨てされていた。
ハエが飛び交い、腐臭が鼻を突く。しかし、タカシのポジティブ(という名の現実逃避)は止まらない。
「ふひっ……なるほどね。これは『あえてどん底からスタートして、ゴミ山の中から伝説の聖剣を見つける』っていう王道イベントだろ? 運営も粋なことするじゃねーか」
ニチャァと笑いながら生ゴミを漁り始めたその時だった。
ズズズズ……ッ!
ゴミ山の一部が蠢き、巨大なヘドロの魔物『ダスト・スライム』が姿を現した。
周囲でゴミを漁っていた貧民たちが悲鳴を上げて逃げ惑う中、タカシだけは目を輝かせた。
「キタキタキタァ! 俺の初陣イベント! 見てろよ、隠された俺のチートスキルが今ここで覚醒……ッ! くらえ、ダークフレイム・マスター・ストラーッシュ!!」
タカシが思いつく限りのカッコいいポーズで叫んだ!
……が、当然何も起きない。
「へ?」
ボチャァッ!!
ダスト・スライムの放ったヘドロの塊がタカシの顔面に直撃。口の中に生ゴミの味が広がり、そのまま全身をスライムに取り込まれそうになる。
「ぐえぇぇっ!? たすけ、死ぬ! やめろ俺は選ばれし勇者だぞ!! あああっ、俺のレアなアニメTシャツが溶けるぅぅぅ!!」
見苦しく泣き叫び、無様に手足をバタつかせるタカシ。
その時――。
「――閃光・ブレイド!!」
眩い光と共に放たれた一撃が、巨大なスライムを一瞬で両断し、光の粒子に変えて消滅させた。
ドサッ、とゴミの上に落ちるタカシ。
見上げると、そこには太陽を背に立つ、輝くような超絶イケメンがいた。
プラチナブロンドの髪に、宝石のような青い瞳。純白の聖鎧を身に纏い、顔面偏差値はカンストしている。
「怪我はないかい? 間に合ってよかった」
イケメンは、ヘドロまみれのタカシに向けて、嫌な顔一つせず爽やかに微笑んだ。
「レオン様!!」
「ああ、レオン様! ご無事で!」
そこに駆けつけてきたのは、第1話でタカシを蹴り飛ばした女騎士と、丸焦げにしたシスターだった。二人の顔はタカシに向けた時とは180度違う、完全に乙女の顔になっている。
「ああ、二人とも。僕は大丈夫だよ。それより、この可哀想な『喋る汚泥』を保護してあげてくれないか?」
「レ、レオン様……っ! あなたはこんな生ゴミにまで慈悲を向けるのですね……! なんてお心の広い!」
「ですがレオン様、そいつは魔物よりタチの悪い変質者です。あまり近づかれませんよう……」
「ちょ、待てやああああ!!」
イケメン(レオン)と美少女二人がキャッキャウフフと空間を作っている中、タカシが叫んだ。
「お、俺の獲物を横取りすんじゃねーよ! てかお前ら、なんでそいつにはデレデレなんだよ! 俺の方が圧倒的にポテンシャル高いし、将来有望だぞ! お前ら全員後悔するからな!!」
ギャーギャーと喚き散らすタカシ。
しかし、レオンは怒るどころか、悲哀に満ちた目でタカシを見下ろし、一枚の銀貨をポイッと投げ渡した。
「……哀れな。幻覚を見るほど飢えているんだね。これでパンでも買うといい。強く生きるんだよ」
「は? いや、ちげぇし! 恵むな! 俺を哀れむなあああああ!!」
「さぁ、行こうか二人とも。まだ救うべき人々が僕たちを待っている」
「はいっ、レオン様っ!」
爽やかな風と共に去っていく、絵に描いたような王道勇者パーティー。
後には、ヘドロまみれで銀貨を握りしめ、ゴミ山の中で一人負け惜しみを叫び続けるキモオタの姿だけが残されたのだった。




