1/81 山邊乃 御井乎見我弖利 神風乃
和銅五年(いつとせといふとし)壬子(みづのえね)夏四月(うづき)、長田王(ながたのおほきみ)を伊勢の斎宮(いつきのみや)に遣はさるる時、山辺の御井にて<作>(よめる)歌
校異:依→作 [西(補訂)]
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原文:山邊乃 御井乎見我弖利 神風乃 伊勢處女等 相見鶴鴨
訓読:山辺の 御井を見がてり 神風の 伊勢乙女ども あひ見つるかも
仮名:やまのへの みゐをみがてり かむかぜの いせをとめども あひみつるかも
がてり:がてら
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原文:浦佐夫流 情佐麻<祢>之 久堅乃 天之四具礼能 流相見者
訓読:うらさぶる 心さまねし ひさかたの 天のしぐれの 流らふ見れば
仮名:うらさぶる こころさまねし ひさかたの あめのしぐれの ながらふみれば
校異:弥→祢 [代匠記精撰本]
***メモ***
弥←祢。
原文:浦佐夫流 情佐麻<弥>之 久堅乃 天之四具礼能 流相見者
訓読:うらさぶる 心見坐まさし 久方の 天の時雨の 流れあふ見れば
仮名:うらさぶる こころみまさし ひさかたの あめのしぐれの ながらふみれば
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原文:海底 奥津白波 立田山 何時鹿越奈武 妹之當見武
訓読:海の底 沖つ白波 龍田山 いつか越えなむ 妹が辺り見む
仮名:わたのそこ おきつしらなみ たつたやま いつかこえなむ いもがあたりみむ
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長皇子と、志貴皇子、佐紀の宮にて倶(とも)に宴(うたげ)したまふときの歌
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原文:秋去者 今毛見如 妻戀尓 鹿将鳴山曽 高野原之宇倍
訓読:秋然らば 今も見るごと 妻恋ひに 鹿鳴かむ山ぞ 高野原の上
仮名:あきさらば いまもみるごと つまごひに かなかむやまぞ たかのはらのうへ