1/5 霞立 長春日乃 晩家流
原文:霞立 長春日乃 晩家流 和豆肝之良受 村肝乃 心乎痛見 奴要子鳥 卜歎居者 珠手次 懸乃宜久 遠神 吾大王乃 行幸能 山越風乃 獨<座> 吾衣手尓 朝夕尓 還比奴礼婆 大夫登 念有我母 草枕 客尓之有者 思遣 鶴寸乎白土 網能浦之 海處女等之 焼塩乃 念曽所焼 吾下情
校異:懸 [元][類][紀] 縣 / 居→座 [元][類][古]
訓読:霞立つ 長き春日の 暮れにける 我つ気も知らず 群肝の 心を痛み 鵼子鳥 うら鳴きをれば 玉たすき 掛けのよろしく 遠つ神 吾が大王の いでましの 山越す風が 独りをる 吾が衣手に 朝夕に 返らひぬれば ますらをと 思はるわれも 草枕 旅にありしは 思ひやる たづきもしらに 網之浦の 海乙女らの 焼く塩の 焼けゆる思ひぞ 吾が下心
仮名:かすみたつ ながきはるひの くれにける わつきもしらず むらきもの こころをいたみ ぬえこどり うらなきをれば たまたすき かけのよろしく とほつかみ あがおほきみの いでましの やまこすかぜが ひとりをる あがころもでに あさよひに かえらひぬれば ますらをと おもはるわれも くさまくら たびにありしは おもひやる たづきもしらに あみのうらの うみをとめらの やくしほの やけゆるおもひぞ あがしたごころ
霞が立つ長い春の一日が暮れていくように、私の気も知らず知らず暗くなっていき、五臓六腑の心が痛み、ぬえこどりのように心悲しく嘆いていると、玉襷のようなお声を掛けてくださった遠い神のような大王がおいでになっている山を越す風が、一人でいる私の衣手を朝に夕にと翻し続けると、丈夫と思われている私であっても、草枕を使うような旅の途中だったので、思いやる方法を知らず、網の浦の海人乙女たちが焼く塩のように焼けていく私の下心。
むらきも(群肝):五臓六腑
ぬえこどり(鵼子鳥):とらつぐみ。悲しげな声で鳴く。
たづき(方便):手段、方法、状態
~~~~~~
1/6
原文:山越乃 風乎時自見 寐<夜>不落 家在妹乎 懸而小竹櫃
校異:<>→夜 [西(右書)][元][類][冷]
訓読:山越えの 風を時じ見 寝も落ちぬ 家に在る妹を 掛けて偲びつ
仮名:やまごえの かぜをときじみ いぬもおちず いえにあるいもを かけてしのびつ
山を越えてくる風が気になって寝ようとしても寝られない。家にいる妻を気にかけて偲んだ。




