1/* さくじょよてい
藤原の京より寧樂(奈良)の宮に遷りませる時の歌
天皇乃 大君の おほきみの
御命畏美 命畏み みことかしこみ
柔備尓之→柔備尓 柔びにし→柔びに にきびにし→やはらびに
※ここでは「穏やかな場所に」
家乎擇→之家乎擇 家を置き→家を選ばして いへをおき→いへをえらばして
隠國乃 こもりくの こもりくの
泊瀬乃川尓 泊瀬の川に はつせのかはに
H[舟共]浮而 舟浮けて ふねうけて
※H:舼[舟共]
吾行河乃 我が行く川の わがゆくかはの
川隈之 川隈の かはくまの
八十阿不落 八十隈おちず やそくまおちず
万段 万度 よろづたび
顧為乍 返り見しつつ かへりみしつつ
玉桙乃 玉桙の たまほこの
道行晩 道行き暮らし→道行き来れば みちゆきくらし→みちゆきくれば
青<丹>吉→青<丹>吉師 あをによし あをによし
※<>→丹 [西(右書)][類][古][冷][紀]
楢乃京師乃→楢乃京乃 奈良の都の ならのみやこの
佐保川尓 佐保川に さほかはに
伊去至而 い行き至りて→行き至らして いゆきいたりて→ゆきいたらして
我宿有 我が寝たる わがねたる
衣乃上従 衣の上ゆ ころものうへゆ
朝月夜 朝月夜 あさづくよ
清尓見者 さやかに見れば さやかにみれば
栲乃穂尓 栲の穂に たへのほに
夜之霜落 夜の霜降り よるのしもふり
磐床等 岩床と いはとこと
川之<水>凝→<氷>凝之川 川の水凝り→凝りし川の かはのみづこり→こごりしかはの
※氷→水 [類][冷]
冷夜乎 寒き夜を さむきよを
息言無久 息むことなく やすむことなく
通乍 通ひつつ かよひつつ
作家尓 作れる家に つくれるいへに
千代二手 千代までに→千代までも ちよまでに→ちよまでも
来座多公与 来坐ませ大君よ きいませおほきみよ
吾毛通武 我れも通はむ われもかよはむ
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原文:青丹吉 寧樂乃家尓者 万代尓 吾母将通 忘跡念勿
訓読:あをによし 奈良の家には 万代に 我れも通はむ 忘ると思ふな
仮名:あをによし ならのいへには よろづよに われもかよはむ わするとおもふな