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令和百物語  作者: みるみる
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第七十六夜 戦争の記憶


僕は夏休みの自由研究に、「戦争の記憶」と題して、祖母の戦争の話を画用紙にまとめて提出しようと思った。


そこで、九州の祖母の家に帰省中、祖母に戦争の話を聞かせて欲しいと頼んだのだった。祖母は、戦争の事を思い出すのは辛いから嫌だが、僕の為ならば構わないと言ってくれた。



「琥太郎、戦時中はばあちゃんも日本軍の武器を作ったりして、お国の為に戦っていたんだぞ。‥ばあちゃんの作った武器で罪のない人間が何人も死んだんだ‥。戦争はもう二度とするもんじゃない。」



そう言って、祖母は戦時中にした体験を僕に話し始めた。



戦時中、当時女学校に通っていた祖母は、学徒動員で兵器工場に配属されたそうだ。日本軍がここで極秘裏に製造していたのが風船爆弾だった。祖母はそこで何に使うのか知らされないまま、大きな風船を作り続けた。


祖母も含めた工員達は何の文句も言わず、明けても暮れてもひたすらに風船を作っていた。工場内は異様な熱気で、常に蒸気も立ちこめており、大変過酷な労働環境だった。


あまりの過酷な労働環境の為、自殺する人も多かったという。



この風船には水素がつめられ、下部には焼夷弾が何個かつけられていた。


この風船は、日本の上空1万メートルに吹き抜ける偏西風を利用して、二日ほどかけてアメリカ大陸に上陸するようになっていた。

 

だが、実際はこの風船がアメリカ大陸に全て届いた訳ではなかった。それにこの風船にとりつけられていたのは焼夷弾だったので、物的被害はほとんどなかった。



「‥琥太郎、戦争とはいざ始まってしまえば、誰もが巻き込まれてしまう。誰も無関係ではいられなくなるんだ。‥世界のどこかで今も戦争が起こっているとしたら‥‥対岸の火事だとは思わない方がいい。」



「‥でも日本は平和だよ。」


「‥そう思うかい?」




九州の祖母の家から帰宅後、僕は祖母の体験した戦争の話を、早速画用紙を何枚か使ってまとめていった。


「琥太郎、近所の商工会で夏祭りやってるんだって。行く?」


「行く!」


自由研究のまとめも終わった僕は、清々しい気持ちで、父と夜の夏祭りに向かった。


「あっ、水風船だ。」


「琥太郎、欲しいか?」


「ううん、要らない。中の水が怖いから。」


「あはは、琥太郎は怖がりだし、潔癖症だからなぁ。


今さぁ、水風船の次元爆弾ってのも流行ってるんだって。琥太郎には無理だよなぁ。」


「うわぁ‥水風船が爆発して中の水が飛び散るなんて最悪だよ‥。汚っ。」



「あはは、汚いかぁ。‥でも確かにあの可愛い外観にみんな騙されてるけど‥‥、水風船が色んなところで爆発して、しかも中の水に何かのウイルスが入ってたりしたら、一溜りもないよなぁ。‥すぐにウイルスが拡散してしまう。」


「‥‥お父さん、それ怖いかも‥‥。」


「琥太郎、どこかのテロ組織がドローンを使って、ウイルスの入った風船を沢山飛ばして世界中で爆発させたら、どうなるんだろうなぁ。」


「‥‥。」


父の話を聞いて、僕は祖母の話を思い出してしまった。


日本は本当に平和なのか?


先日も、日本の上空に謎の風船が飛んでいるというニュースが報道されていた。


だが、日本人の誰もその後の風船の行方を知らないし、真剣にその正体を知ろうとる者はいなかったように思う。


もしあれが何らかのテロだとしたら、どこかで爆発して、得体の知れない何かウイルスが飛び散っていたらどうなってしまうのだろう?


もし、僕達日本人の知らない所で、日本が既に戦争に巻き込まれていたのだとしても、僕達は今後も何も知らずに日々を過ごしていくのだろう。


第二次世界大戦時も、政府は言論統制をしたり、色々な事実を隠してきた。


戦時中と今と一体何が違うのだろう。‥何も変わっていない気がしてしまうのは僕だけだろうか。


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