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令和百物語  作者: みるみる
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第七十五夜 実験室


2027年8月某日、政府直轄の実験施設の実験室に10人の若者が集められた。


そしてその実験室の上の階の一室に僕達はいた。実験室の様子は、モニター画面を通して見る事ができた。


「この若者達はどうやって集めたんですか?」


「‥前回までと同様、ネットで誹謗中傷ばかりしてる奴や、政治批判をしてる奴だ。しかも、皆んな人間関係が希薄な為万が一亡くなっても極秘裏に処理できる。」


「‥この実験も彼らには本当の内容は伝えられてないんですよね。」


「当たり前な事を聞くな。」


「‥この実験も今後の人類の発展の為に必要な実験なのですよね、我々は間違った事はしてないんですよね!」


「ああ、我々は重要な任務を遂行してるだけだ。何も心配はいらない。」


「‥‥分かりました。」



実験室から被験者達は、2畳ほどの個室に移動させられた。被験者達の個室には、勿論カメラが仕掛けられていた。


我々は被験者達の様子をそれぞれのモニター画面で、リアルタイムで確認できた。


被験者達の個室の前には、看守もつけた。


実験が始まった。


被験者達の個室には、机と布団、トイレがあるのみで、私物の持ち込みは許されなかった。しかも室内は壁も床も机も布団も全て白色で統一されていた。


彼らには、この部屋で二週間孤独に耐えてもらう、テレビの企画だと伝えてある。しかも本当に最後まで耐えた者には100万円を渡すと言ってあるのだ。


普通ならこんな話を信じる馬鹿はいないが、我々の作ったブラックリストにある若者達のパソコン画面に、我々の実験の広告をそれらしい放送局の名前入りで出し、被験者を募ったところ、彼ら10人が集まったのだった。


彼らには携帯電話や本の持ち込みも許されなかった。ただひたすら真っ白な個室で過ごすのだった。


しかも彼らには、ひとつだけ課せられた課題があった。


それは、部屋の壁にかかる鏡に向かい、起きてる間は一時間に一回は必ず話しかける事だった。


鏡にうつる自分に向かい、彼らはこう言うのだった。


「お前は誰だ。」 



最初は、簡単な実験だし三食ご飯付きだしラッキーだと喜んでいた被験者達も、日を追う内に段々と不安を訴えてくるようになった。


扉を叩き、看守に向かい大声で助けを求めてきた。


「もういい、出してくれ!頭がおかしくなる!もう一週間ぐらいたったんだろ?ギブアップさせてくれ!」


看守達は、被験者とは喋れない規則の為、返事は返って来る事はなかった。


彼らはこの部屋に一度入ったが最後、出たくても出してはもらえない事実にようやく気付いた。


そして携帯も何もない真っ白な空間で、次第に狂っていった。


鏡に向かい、彼らは今日も聞くのだった。


「お前は誰だ。‥‥俺は誰なんだ‥。」


以前はふざけた気持ちで鏡に話しかけていた彼らも、今では鏡に向かって真剣に聞いていたのだ。


まるで、自分が何者なのかを忘れてしまい、その答えを鏡に求めるかのように‥‥。


ゲシュタルト崩壊である。


この実験は、数週間ほど続けられた。被験者のほとんどは、まともに会話も出来なくなっていた為、他の人体実験施設へと移送された。


こうした実験は、戦時中でも戦後でもない現代の日本において今もなお秘密裏に行われているのだった。


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