第四十一夜 海
僕達は家族ぐるみで海へ来た。
海へ着くなり、大人達によって砂浜の上にシートが敷かれ、テーブルとパラソルがセットされた。
そして大人達は、早速ビールを片手に枝豆とスルメを食べ始めてしまった。
「お父さん、泳ごうよ。」
「え~っ、もうビール飲んじゃってるし、お父さんはパス。」
「俺もパス。お母さんに頼めよ。」
「私だって日焼けするし嫌よ。」
僕達は、大人が誰も一緒に来てくれなかったから、結局子供だけで浮き輪を持って海へ出た。
「海って臭いな。もっと無臭かと思った。」
「あはは、父ちゃんがさっき、磯くせーって言ってた。」
「磯くせー。」
「あはは。」
僕達は、初めての海に興奮していた。海のくさい匂いすら楽しかった。
「足に貝が刺さって痛え。」
「ちょっ、見てみろよクラゲだぜ。ここから見たらビニール袋じゃん。」
「クラゲに刺されたら痛いし腫れるんだぜ。」
「やっべ、逃げろー!」
「待てよ!」
こうして僕達は、とうとう足がつかない深さの所まで泳いで来てしまった。
「‥なあ、あの浮いてる玉の所まで泳いで行こうぜ。」
「‥やばいよ。あまり遠くへ行くなって言われたじゃん。」
「でも、あれ触ってみたくねぇ?」
「‥‥。」
僕達は、遠く離れた沖の方にあるオレンジ色の玉の並んだラインを目指して泳ぐことにした。浮き輪にしっかりとつかまり、足をバタバタさせて泳ぎ進んだ。
泳ぎ疲れた僕らは、泳ぐのをやめて浮き輪につかまって休んでいた。
「おい、何だか勝手に進んでね?」
「本当だ。だいぶ遠くまで流れてきたな。」
「砂浜がめっちゃ遠い。‥帰れるかな?」
僕達は段々と不安になったが、それでも砂浜の方へは戻らなかった。
そして、沖と浅海の境界線にあるオレンジの玉に到達し触る事ができた。
「なぁ、このラインのこっちと向こうって何が違うのかな?ちょっと行ってみねぇ?」
「バカ!溺れたり、もっと沖に流されたら帰れねぇだろ。それにサメが出たら死ぬぞ!」
「‥もう帰ろう。お父さんとお母さんに怒られるよ。」
僕達は、オレンジの玉にも触れたし、親のいる砂浜へ泳いで帰ることにした。
ところが、いくら足をバタバタさせても、全然進まなかった。疲れて休むと、すぐに沖に流されてしまった。怖くて必死に泳いだ。
ようやく砂浜に着いた時には、もうヘトヘトだった。それでも無事帰ってこれて安心した。
僕達はてっきり親達に叱られる思っていたのに、親達は飲んだり食べたりして騒いでいて、誰も僕達に気付いていなかったようだ。
僕達は、子供を放ったらかしにして騒いでいる親達に少しだけ恐怖を感じてしまった。




