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令和百物語  作者: みるみる
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第三十五夜 ヨガ瞑想


俺は知美に連れられて、星空ヨガに来ていた。夜空の下でマットを敷いて、ゆったりとヨガをするイベントらしい。


「伸樹もこのマットを敷いて、その上であぐらをかいて待っててね。」


知美に言われるがままに、マットの上であぐらをかいた。辺りを見回すと参加者のほとんどが女性だった。


あとは、たまに俺のように彼女や奥さんから無理やり連れてこられた男性が二人、それに見るからにヨガが好きそうな雰囲気を持った男性が一人いた。そのヨガが好きそうな男性は、長髪で痩せており、インド綿のオリエンタルな柄のゆったりズボンを履いていた。名札を見ると片瀬と書いてあった。


片瀬さんは、すでにあぐらをかき、手を膝の上に乗せて呼吸を整えていた。


ヨガといえば、女のダイエットや宗教的なイメージしか持っていなかったが、今では自己啓発セミナーでも使われる程メジャーになっているようだ。まぁ、これも知美の言うことなので、眉唾物だが。


でも確かに、外で胡座をかいて深呼吸をすると気持ちがいい。静かに目を閉じて心を落ち着かせて肌にかすかな風を感じる。


悪くはない。こんなにも静かな時間を過ごすのは久しぶりだ。


これは、座禅にも似ている。ヨガというより瞑想に近いな。


そんな事を考えていると、インストラクターの声が聞こえてきた。


「はい。皆さん準備が整ったようですね。今日は、星空ヨガにようこそ。今から皆さんとヨガをしながら、星空の旅を楽しみたいと思います。」


インストラクターの声が静かにゆったりと耳に入ってくる。


「では、呼吸から。人差し指で片方の鼻を押さえます。鼻から息を吸って‥吐いて‥‥。手をかえて反対側も鼻を押さえて、息を鼻から吸って‥吐いて‥‥。」


鼻呼吸を繰り返す。慣れてくると、いつもより深く息が吸えた気がした。普段よほど浅い呼吸をしていたらしい。


なるほど、これは健康にも良いかもしれない。


それからも様々なポーズをとりながら、その都度目を閉じ瞑想を行った。


星空ヨガはいよいよ終盤になり、マットの上で再びあぐらをかいた。


深い呼吸を繰り返し、頭の後ろから太陽の光があたって眩しいイメージを思いうかべて、オームを唱えた。


自分の口から発声した言葉が他人の声のように耳に響いてきた。


耳なりと共に辺りの音が全てシャットアウトされ、まわりは静寂と暗闇に覆われた。


この世界にまるで自分一人しか存在をしていないかのような恐怖。すると、急に宇宙が見えてきた。


ふと、そういえば宇宙に果てはあるのか?と疑問が生じ、宇宙の果てを目指してみた。宇宙の果ては‥‥まさか‥‥。


ふと気がつくと、星空ヨガは終わっていた。


「あー、気持ち良かったぁ。身体がほぐれて軽くなった感じがするわぁ。」


隣で知美が気持ち良さそうに伸びをしていた。


正面から感じる視線に気付き、反射的に目を合わせてしまった。あのヨガが好きそうな雰囲気を醸し出していた片瀬さんだった。


片瀬さんが近づいてきて、俺に話しかけてきた。


「あなたもこの世の真実を見てしまったのだとお見受けします。驚いたでしょう、この世に自分一人しかいない事実は受け入れがたいものです。そして、宇宙の果てを見たんじゃないですか?何の輪郭をしてましたか?」


「俺には、まだ片瀬さんの言うことが全ては理解できません。でも、宇宙の輪郭は見てしまいました。あれは‥‥。」


「ちょっと、伸樹。帰るよ!」


片瀬さんに何かを言いたかったのに、知美に邪魔をされてしまった。


片瀬さんは自分の名札を見て、俺が片瀬さんの名を口にした事に納得した様子で、軽く会釈をして去って行った。


「伸樹、へんな宗教とかに勧誘されないでよ。ここへは伸樹の健康の為に連れてきたんだから。」


知美はそう言って、俺達二人分のマットやお茶、タオルを片付け始めた。


俺は先程までの不思議な体験は、インストラクターの誘導により、脳の作った幻影を見ていただけなんだろう、そう自分に言い聞かせていた。


だが、人間のかたちをした宇宙の輪郭線の映像だけがどうしても頭から離れなかった。


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