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令和百物語  作者: みるみる
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第三十四夜 ポスト


ポトンッ。


「お母さん、郵便屋さんが来たよ。」


「はーい。今取りに行くから。」


我が家には、赤い郵便ポストがあります。おじいちゃんが私の為に作った木製のポストです。


このポストが家の玄関に設置されてからは、私は毎日のように郵便物がポストに入れられるのを待っていたのです。


「お母さん、何が入ってた?」


「チラシだよ。風香に勉強しませんかっていうチラシ。どうする?」


「私がもらう。」


「風香、お母さんは買い物へ行ってくるからお留守番頼むわね。誰が来ても開けちゃ駄目よ。」


「うん、気を付ける。行ってらっしゃい。」


ボトンッ。


あっ、また郵便だ。私はすぐに取りに行きました。封を開けます。


「ふうか、おまえの あかあさんはくるってる。はやくにげろ!」


またこの手紙です。いつもお母さんが買い物へ行く時間を狙ったかのように、私宛てに届くのです。


私はお母さんに見つからないように、ビリビリに破って捨てました。


昼過ぎに出かけたお母さんが、夕方になって戻ってきました。


「風香、ただいま。」


「お母さんお帰りなさい。」


「お母さん疲れちゃった。もう寝るね。」


「うん、おやすみ。」



次の日、お母さんはお昼過ぎからまた出ていきました。


ピンポーン、ピンポーン


誰かが来ましたが、危ないから誰が来ても開けなくていいと言われてたので、扉は開けませんでした。


ボトンッ。


それでも、ポストの手紙は別です。私はすぐに取りに行きました。


また見慣れた封書が入っていました。


「ふうか、にげろ。はやく、きょうでもいいからにげろ!」


また同じような手紙でした。だれがどうしてこんな手紙を入れるのか分からないけど、逃げてみたくなりました。


私は裸足で外へ出ました。


眩しい。でも、外はとても明るくて空気が美味しい。私は体力がないので、日陰で横になって休みました。


しばらくすると、近所の人の通報で私は警察に保護されました。その後、児童施設に預けられました。


お母さんは、おじいちゃんとお金の事で揉めて殺してしまった罪と、私を殺して保険金を取ろうとした罪で捕まってしまいました。


お母さんが毎日お昼に出かけていたのは、好きな男の人がいたからだそうです。


私はおじいちゃんがいなくなってから、ご飯を食べたり、お風呂を入ることをあまりしていませんでした。お母さんが育児放棄をしていたからだそうです。


私はもうすぐ小学校へ入学するそうです。施設の人が、入学用品を揃えてくれました。


私のポストへ手紙はまだ届いているのでしょうか。


手紙の主は誰なのでしょうか。毎日お母さんのいない時間を狙って手紙が入れられていた事、私がポストへ手紙が入るとすぐに見に行く事を知ってる人だとは思います。


私のお父さんでしょうか?お母さんとおじいちゃんと暮らすようになってからは全く会えていませんでしたが、時々様子を見に来てくれてたのかもしれません。


お母さんには、誰が来ても絶対に扉を開けないように言われてましたが、私が家を逃げ出した日に、来客のチャイムがなった後すぐにポストの手紙を取りに行くと、何となくお父さんらしき後姿を見ました。


お父さんは、新しい家族と暮らしてると聞きました。それでも、時々私を気にかけてくれてたんだとしたら、こんなに嬉しい事はないです。


お父さん、ありがとう。


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