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令和百物語  作者: みるみる
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第十九夜 誕生日


「お母さん、お父さん帰って来た?」


「まだだよ。道が混んでるんじゃないかな。」


「えーっ、ケーキ食べれないのかぁ。もう八時じゃん、お風呂入って寝る時間じゃん。」


「明日学校休みだし、夜更かししちゃえばいいじゃん。お風呂だけ済ませておいでよ。」


「はーい。お風呂行くね。」


今日は私の誕生日です。父が仕事帰りにケーキを買って来てくれると言うので待っていたのです。


なんでもそのケーキは、テレビでも取り上げられた事がある特製チーズケーキだそうで、私はとても楽しみにしていました。


お風呂を上がって、九時を過ぎた頃やっと父が帰って来ました。


「美那〜ただいま。遅くなってごめんな。ケーキ食べるぞ〜!」


「お父さん遅い!何かあったの。」


「あぁ、事故があったみたいで道が混んでたんだ。ケーキを貰った時に保冷剤を余分に貰っておいて良かった。」


「そうなんだ、大変だったね。お父さんご飯は?」


「いや、今日はビールとケーキでいいや。」


「えー、変なの。」


グラグラグラ、ガタガタガタ、ガガガガ


「美那、地震!」


「お母さん、お父さん、怖い。」


ガガガガガ、ガガ、


「お父さん、お父さん!外へ出よう。」


「そうだな、揺れがおさまったし、ちょっと外の様子を見るか。」


そう言って私達が外へ出る時、マンションが崩れてきました。


「お父さん!お父さん!お母さん、お父さんが!」


父が崩れたマンションの中に置き去りになってしまいました。


「‥‥美那、行くよ。私達は生きなきゃ。」


「‥そんな、そんな‥。」


私と母は、避難所へ向かいました。そこで身を寄せ合って眠りました。







「美那、美那、お父さんが道が混んでて遅れるから、先にご飯とお風呂を済ませとけだって。」


「あれ、お母さん、ここ家の中だよね。お父さんは?」


「だから、今お父さんから電話があって遅れるんだって。もう、ボーッとしてないでお風呂入ってきて。」


「はーい。」


私は学校から帰って来てから、ウトウトして眠ってしまったようです。変な夢を見ました。


「おーい、美那ケーキだぞー!遅くなってごめんな。」  


「お父さん、おかえり。すぐケーキにしようよ。お父さんは、ご飯を食べないでビールとケーキにするんだよね。」


「あぁ、よく分かったな。美那はお父さんの事は全てお見通しだな。」


そう言って、三人でケーキを食べました。有名なお店の特製チーズケーキです。



グラグラグラ、ガタガタガタ、ガガガガ


ガガガガガ、ガガ、


「美那、お父さん、地震!」


私は、ふとさっきまで見ていた夢の事を思い出しました。揺れがおさまるのを待っていたら、父は崩れた建物の下敷きになって死んでしまう!


「お父さん、お母さん、すぐ外へ出よう!このマンション古いから崩れちゃうよ、早く!」


「分かった、出よう!」


私達は、マンションの外に出て、自分達の住んでいたマンションが崩れて行くのを見つめていました。


私は今も夢を見ているような気分でした。私は確かに自分の誕生日を二度も経験したのです。一度目は夢の中でしたが。


でも、ふと思うのです。あれは本当に夢だったのでしょうか。


「あとちょっと遅かったら、俺たち死んでたな。‥‥美那の誕生日、散々だったな。」


そう言って父が私の頭を撫でてます。母も私を抱きしめてくれてます。私は両親の温もりを肌で感じて、幸せを噛み締めていました。


皆んな生きてる!


「最高の誕生日だよ!だって、三人でこうして生きていられるんだから。」 



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