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005:『出発の朝』

やまと まほろばの転生戦艦


005『出発の朝』





 翌朝、7030(午前7時30分)、半壊した正門。



「武蔵、学園警備のことは頼んだぞ」


「ああ、まかせておけ」


 姉妹で短い言葉を交わすと、二隻の僚艦とともにやまとは校長と理事長に向き合った。


「それでは、B調査艦隊、出校いたします」


「うむ、今朝は霧が濃い、気を付けて行ってこい」


 ビシ 


 ホヒーーホーーー


 敬礼を決めると門衛の号笛が鳴って、三艦は日帰り教練のような穏やかさで正門から出校した。


 それが合図であったかのように、校内各所から、瓦礫を片付けたり校舎の補強作業をする音が聞こえはじめる。教官や生徒たちは、それぞれの持ち場で三艦を見送り、それまで控えていた作業を開始することで見送りの挨拶としたのだ。




「……かなんなあ、みんな期待してくれてぇ、今になって緊張してくるやないかぁ(^^;)」


「平常心でいかんなぁ、つまらんところでミスをすっど」


「なに言うてんねん、まだまだ、学校のねき(近所)やがな。余裕でいかなら、長い任務、顎が出てしまうでぇ……うわ(*△*)!」


「ほら、いわんこっじゃなか」


「ちょっとけつまづいただけや。霧で分からんかったけど、なんや、あちこちに穴やらヒビやら……被害は学校の外にまで及んでるみたいやなあ……」


「半分は河内がそこつじゃっでじゃなかとけ?」


「なんやとぉ!」


「ふたりとも……」


「「はい!」」


「いや、とがめてるんじゃない。この、道路や周囲の様子はビキニの攻撃だけによるものじゃないような気がする。気を付けて見ていてくれ」


「「ハ!」」


 ワシントン軍縮条約(1922年=大正11年)以前の旧式戦艦、その最後は火薬庫の爆発に寄る爆沈であったり標的艦として味方戦艦に撃沈されたり。不幸な影を落としているが、どこか大正ロマンを背負ったゆるみがあって、好ましく思うやまとだが、指揮官として言うべきことは言う。


 晴れていれば5キロ向こうのヒョウタン山まで見通せる道なのだが、せいぜい500、ものの文目(あやめ)が分かるのは300メートルといったところだ。


 スタスタスタ……


 三人とも歩数を数えている。慣れた士官・下士官は無意識に船の速度を計っている。艦首で見た波が艦尾を過ぎる時間をカウントすれば速度が分かり、それに時間を掛ければ距離が分かる。陸上では、おおよその歩数をカウントする。自分の歩幅を掛ければ距離が分かるのだ。  


「あれ……このへんで、三叉路になってるはずやでぇ……」


「地図でたしかむっど」


 パサ


「正門出てから5分はたっちょい……4分までには三叉路んはずじゃ……」


「この地図だいじょうぶなんかあ?」


「これは……」


 やまとが腕組みすると、そろってやまとの顔を見る旧式戦艦のふたり。


「視界は……」


 そろって振りかえると、学園の校舎は霧に滲んで輪郭が知れる程度。


「400は進んでいる。どうも地形が変わっている……少し進んで霧がましになったら観測機を出そう」


 観測機は旧式の河内・薩摩には積まれていない。やまとには二機のカタパルトと六機の観測機が搭載されている。生前は戦局の悪化により観測機が配置されず、沖縄特攻時には回収用のクレーンさえ取り外されたやまとだが、転生してからは定数一杯搭載されていることを確認済みだ。


「そろそろとちゃいますか?」


「うむ、発進準備をしよう……」


 風上に正対すると、一気に最大戦速になるやまと。カタパルトの射出速度でも間に合うのだが、少しでも確実な射出を行うために合成風力を作るのだ。


「「わっ( ゜Д゜)!」」


 河内も薩摩も最大戦速はせいぜい20ノット、やまとの27ノットには追いつけず、たちまち距離を開けられる。


 やまとの両肩にカタパルトが現れて、三機ずつの零式観測機と零式水上偵察機が射出された!


 ズドン ズドン ズドン


「よし、30度間隔の扇形に飛ばしたぞ。往復で15度間隔。前方300キロの情報はつかめるだろう」


「いやぁ、やまとは速いわぁ(;'∀')」「7ノットん差は、まことにふて!」


「前世で、全機発進やったことは無かったからな」


「いやぁ、自分らのころは艦載機は搭載しちょらんかったでねえ……」


「せいぜい、観測気球やったさかいねえ、グレードがちゃうわぁ……」


 ようやく霧の晴れた空を見上げる三人。


 河内がポニーテールを振ってやまとに訊ねた。


「ええとぉ……六機とも下駄ばきの水上機やったけど……」


「ああ、フロートがアクセントになって、空母艦載機よりもたくましく見える……」


「いや、そうと違ぅて、ここは海やあらへんし……」


「あ、じゃっど!」


「うん?」


 鷹揚に振り返ったやまとに、河内は言った。


「帰ってきたとき、どないやって収容するんでっか?」


「あ…………(;'∀')」


 

 息が停まりそうになったやまとだった。

 


 

☆彡 主な登場人物


・やまと     転生戦艦、まほろば学園の女生徒

・素戔嗚命    まほろば学園理事長

・東郷平八郎   まほろば学園校長

・仲間の戦艦たち 武蔵 陸奥 伊勢 日向 金剛 比叡 榛名 霧島 扶桑 山城

・他の艦艇    信濃丸 秋月 氷川丸 間宮 大淀


☆彡 重要語句


・ビキニ艦隊   ビキニ核実験で使われた艦船の艦隊 まほろば学園の敵

・学園警備艦隊  ビキニ来襲以来結成されたまほろば学園の艦隊 旗艦・武蔵

・ビキニ調査艦隊 ビキニ艦隊の調査のために派遣された艦隊 旗艦・やまと 

・ビキニ作戦   乙・004回校長室で発令     

  

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