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無限スキル【スパチャ】でダンジョン無双~ガチ攻略勢オタクとギャル配信者の同棲ダンジョン配信生活~  作者: はむばね


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第17話 オタク、試行する

 モンスターのレベル感については、概ね全てのダンジョンで共通しているというのが現在の通説だ。

 どこかのダンジョンにおいて深層に出てくるような強力なモンスターが、別のダンジョンの浅層に現れた……なんて報告は今のところ一件もない。


 それはもちろん、絶対にあり得ないという証左ではない。

 卯月さんの『ガチャ』みたいに、階層に合わないモンスターを出現させるスキルなんかもあるわけだし。


 とはいえ、跋扈するモンスターが階層についての大きな判断材料になるのは確かだ。


 というわけで、気配がする方へと進んできたわけだけど。


「……見たことないモンスターだな」


 角の向こうをそっと覗き見て、思わずそう漏らすこととなった。

 そこにいるのは、虹のように何色にも分かれた毛皮を持つ狼のようなモンスターだ。


 そんな派手な毛色の狼種モンスター、少なくとも俺の知識には存在しなかった。


「オタくんが見たことない、ってことは……」


「人類未踏レベルのフロアということですの……!?」


 俺の呟きを受けて、卯月さんと龍造寺さんの表情が引きつる。


 驚いた様子ではあっても、モンスターに聞こえないよう小声なのは流石だ。


「そうとは限らない。限らないけども……」


 俺は、ダンジョン管理協会が発信しているモンスター情報には全て目を通している。

 これまでに発見されたモンスターは全て記録されているはずなので、その中にないってことは少なくともダンジョンから生還した人類の中に遭遇した奴はいないということ。


 とはいえ、特定のダンジョン固有のモンスターというものは存在する。

 遠野ダンジョンの河童型モンスターなんかが代表だ。


 新発見されたダンジョンの固有種であれば、誰も遭遇したことがないのも当然と言えた。


 ただ……。


「とりあえず、ちょっと戦ってくるわ」


「そんな、コンビニ行くみたいなノリでさ……」


「戌亥様を信頼していないわけではございませんが……大丈夫ですの……?」


 自分の感覚を確かめにいこうとしたところ、二人から心配げな顔を向けられた。


〈 いつものダンオタすぎる…… 〉


〈 モンスターハウス的な部屋への転移トラップにかかった時も心配ポイントが撮れ高だけだった男だ、面構えが違う 〉


〈 流石に未知の階層はダンオタでもヤバくね? 〉


〈 フラグじゃないことを祈る 〉


 あと、視聴者からも。


 転移トラップを経ても配信が途切れなかったのは、不幸中の幸いってところだろう。

 『スパチャ』が封じられたら、俺の戦力は激減するからな……。


「ま、最悪逃げるくらいはどうにかなるさ」


 それすらままならないようなら、どっちみち詰んでる。

 という言葉は流石に口には出さず、懐からナイフを取り出しながら踏み出した。


 これは『スパチャ』産の武器ではなく、付与された効果もこの場面じゃ意味がない。

 しかし先が見えない以上スパチャは温存すべきだし、未知のモンスターを相手にするのには特殊な効果はむしろない方が良いと言えた。


『グルぅ?』


 気配を殺して後ろから忍び寄ったけど、間合いに入る前に気付かれてしまった。


 俺のにわか隠密術なんかは通じない、か……なら、防御面はどうだっ?


「しっ!」


 鋭く息を吐き出しながら、ナイフで斬りかかる。


『グルぁ!』


 が、初撃は狼が素早く身を翻したことで空振った。

 狼は着地すると同時に床を蹴って襲いかかってくる。


 速い……が、対応出来ないほどじゃない!


「はっ!」


 カウンターとなるタイミングで、狼の喉を斬り裂く。


『ギャぅ!?』


 普通の生物なら致命傷だけど、モンスターの見た目ほど当てにならないものもない。


 悲鳴を上げて狼が倒れ伏した後も、油断なくナイフを向けながら様子を見て……その身体が光の粒子となり始めたところで、小さく息を吐きながら構えを解いた。


 ……が、しかし。


「っ!?」


 直後に、その判断が誤りだったことに気付く。

 狼の姿は確かに光の粒子に変化していたけれど、消える気配がない。


 それどころか、光の粒子は輝きの強さを増していく。


「嘘だろ……!?」


 そういう(・・・・)最期を迎えるモンスターが存在することは、認識していた。

 けど俺が知る限り、ゴーレムやガーゴイル、リビングアーマーなんかの無機物系のみ。


 確かにあっけなすぎるとは思ったけど、まさか生物系のモンスターが……!


「自爆だ!」


 細かい指示を出す猶予はないと判断し、短く状況を伝えた。


 同時に、自身の装備をマジックバッグ内のものとチェンジする。

 こんなこともあろうかと……思ってたわけじゃないけど、入れておいて良かった。


 これ(・・)で防げないなら、そもそも俺の手持ちじゃ詰んでると言える。


「『倍加』!」


 後方から聞こえた龍造寺さんの声を掻き消す爆音と共に、光の粒子が弾けた。


「っ……!」


 重い両手を動かし、どうにか頭部を庇う格好に。

 凄まじい爆風の気配を感じる……が、思っていたような衝撃は一向に訪れなかった。


 なんだ……?

 まだ爆発ダメージ自体は発生してないのか……?


 ……いや、もしかして?


 そう思って、今装備している鎧のスペックを確認する。


「……なるほど、そういう処理(・・・・・・)になるのか」


 納得すると共に、全身に入っていた力が抜けていった。


 これなら、問題ない。


「オタくぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅぅっぅぅん!」


 爆風の余波まで過ぎ去ったところで、卯月さんが近づいてくる気配。


 今の動けない(・・・・)ので、そのままで待つ。


「大丈夫!? 物凄い爆発だったけど……生きてるよね!?」


「わたくしの見込みが正しければ、ご無事なはず……です、わよね……?」


「あぁ、問題ない。無傷だ」


 目の前まで来た心配げな二人に、頷いて見せた。

 とはいえ可動部の少なさゆえに、二人にはちょっと頭部が動いただけに見えたかもしれない


「それは良かったけど……えっと、そのクソゴツい鎧ってもしかして……?」


 今の俺は、全身鎧に身を包まれていた。


 卯月さんは、それを上から下までしげしげと眺めている。


「そう……『不落の鎧だ』」


「や、名前は初耳だけども。確か120キロくらいあって、着たら動けなくなるやつだよね? あの、無駄な買い物シリーズの」


「こうして、役に立ったろ?」


「うん、まぁ、うん……そうなんだけどさ……」


 ドヤ顔になっているであろう俺に対して、卯月さんは何とも言えないような表情だ。


「でも、無傷……?」


 何に疑問を持っているのかはわかる。


「ほほほ、わたくしのファインプレーですわね」


「あぁ、全く以てその通りだ」


 俺の無事が確認できたところから、龍造寺さんもドヤ顔になっていた。


「ま、まさかホントに……?」


 卯月さんもその可能性は考えていたらしく、頬にタラリと汗が流れる。


「そう……『不落の鎧』の、元の効果は物理ダメージカット50%」


「それを『倍加』することによって、軽減率100%を実現したのですわ!」


〈 そんなガバ計算が通じてたまるかよ 〉


〈 通じとるやろがい 〉


〈 50%カットを二回適用して75%カットとかじゃないんだ…… 〉


〈 あれ……? もしかして、『アイテム効果倍加』ってイカレスキルなのでは……? 〉


〈 も、元々の装備がイカレてたのもあるから…… 〉


〈 そもそも、なんであの一瞬で鎧の効果を理解して倍加する判断に至れたんだ……? 〉


〈 前にダンオタが自宅配信で効果に触れてた鎧だから 〉


〈 あぁ、エレドラさんだもんな…… 〉


 コメントの皆も、困惑半分納得半分ってリアクションだった。


 実際、俺も龍造寺さんのスキルを侮っていたようだ。

 この手の割合系効果は重複しないっていうのが定説なんだけども、まさか字面通りに『倍加』出来るとはな……。


 これは、思っていたよりも応用範囲が広そうだ……が、ひとまず今重要なのは。


「とりあえず、あの狼に関しては対処する目処が立ったな」


「でも、鎧か雅ちんのどっちかが欠けてたらヤバかったよね? あのレベルのモンスターばっかだとすれば、キビくない……?」


「狼系は、フロア内じゃ最上位モンスターなことが多い。それがワンポイント対策でどうにか出来るレベルなら、他もどうにかなる可能性が高いと思う」


 もちろん『これまでに発見されたダンジョンでは』って前置きが付くから、絶対ってわけではないけど。

 ひとまず、モンスターから逃げ回ることが最優先で探索もままならないって事態には陥らなくて済みそうだ。


 が、しかし。


「とはいえ未知のダンジョンな上、ここがどの程度の階層なのかも不明……基本的にダンジョンは深いフロアになるほど広大になるし、見たことのない類のトラップもあると思う。ちょっとこれは、帰り道の目処は全く立たないな」


「……ですよねー」


「……ですわよねー」


 どう少なくとも見積もっても、探索に数日はかかるだろう。


 言外に込めた俺の意図を正確に読み取ったらしい二人は、やはり顔を強張らせるのだった。

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