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無限スキル【スパチャ】でダンジョン無双~ガチ攻略勢オタクとギャル配信者の同棲ダンジョン配信生活~  作者: はむばね


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第14話 ギャル、お嬢様と分配する

 ウチのガチャによって陥ったピンチを、オタくんに救ってもらって。


「ホントありがと、オタくん! オタくんがいなかったらマジで死んでたよ~! ……ごめんね? 反省してる」


「……何か、反省するようなことなんてあったか?」


 心からのお礼と謝罪を送ると、オタくんは不思議そうな首を捻った。


「や、ウチのせいでめっちゃ危険な状況になっちゃったわけで……」


「危険……?」


 ……うん、まぁ、オタくんからすれば危険でも何でもなかったんだろうけど。


「ウチが余計なことしなきゃ、オタくんの手を煩わせることもなかったんだしさ」


「別に、この程度は手間ってわけでもないさ」


 それに、と続けてオタくんはニヤリと笑った。


「おかげで、撮れ高はバッチリだ。むしろ、今後もこの調子でお願いしたいくらいだよ」


「あ、はい……」


 これは、オタくんなりの気遣い……でも、あるんだろうけど。


 間違いなく、本心から言ってるよねぇ……頼りになるというか、何というか……。


「戌亥直孝様!」


 うぉ、ビックリしたぁ……雅ちん、急に何……?


 ……あっ、もしかして。

 ウチとオタくんが親しげに話してるからヤキモチ焼いちゃった……とか?


 だって雅ちん、オタくんのことが……だもんねー。


 にしても、やけに真剣な表情だな……。


 えっ、もしかして……ワンチャンこの場で告白……とか?


「今日のところは、引き分けということにしておいて差し上げますわ!」


 ……うん?

 なんか、すっごく独特な告り方だね?


 ……いやこれ、告白か?

 流石に違うくない?


 じゃあ、何なんだろ……?


 ………………えっ?

 まさか?


 これ、自分はオタくんのことをあくまでライバル視してるって体で話してる……とか?


 あはっ、流石にそんなわけないかー。

 いくらなんでも、無理筋が過ぎるもんねー。


 あっそっか、今のはウチに向けての言葉だったってこと?


 ……いや、思いっきり「戌亥直孝様」って呼びかけてたもんな……。


「うん、まぁ、うん……」


 ほら、オタくんもどう反応していいもんやら困ってんじゃん。


「それでは、またお会い致しましょう!」


 だけど雅ちんは、それ以上説明することもなく去っていく……かに、思われたけど。


「……その前に、本日のドロップ品の分配ですわね」


 ピタリと足を止めたかと思えば、いそいそと戻ってきた。


「ストーンブルのドロップ品はロックレザー……今回は4部位出てますわね。では、こちらが貴女の分でしてよ」


 それからさっきドロップした、革? のうち3つをウチに渡してくる。


「え? なんで半分こじゃないの?」


「特に事前の取り決めがなかった場合、ラストアタックを与えた者に分配を多くする……野良パーティでは、これが基本でしょうに」


 尋ねたウチに、返ってきた雅ちんの視線には呆れの色が混じっていた。


「でも今回の場合、ウチがラストだったのはたまたまじゃん?」


「たまたまだろうがなんだろうが、そう決まっているのです。でないと、過程の貢献度がどうとか判別しづらい基準で揉める原因となりますから」


「や、でもさ……ウチは最後の方にちょっと参加しただけで、ずっと戦ってたのは雅ちんなんだし……」


「それこそ、無意味な評価項目ですわ。弱点の法則を見いだせなかった以上、わたくしが戦っていた間はほぼノーダメージ。貢献度としては限りなくゼロでしてよ」


「えー……?」


「時間は有限、今まさにこうしている時間の無駄こそがわたくしに損害を与えていると思いなさい。ほら、これが貴女の取り分です」


「じゃあ、うん、ありがと……」


 確かにここで揉めてても無駄かなって思って、とりあえず受け取りはしたものの。


「……ホントに、いいのかな?」


 やっぱり納得感はなくて、オタくんの方に助け舟を求める。


「急造パーティーなら、妥当な配当基準だ」


 けど、オタくんとしてもそういう考えらしい。


「わたくしの父は、ダンジョンでの商いで一代にして龍造寺グループを築き上げました」


 雅ちんがそう続けたのは、それでもまだウチの顔に不満が残ってからなんだろうな。


 ……ん?

 いや、ちょっと待って?


 龍造寺グループ……って、ウチでも知ってるダンジョン事業の大企業じゃん!?

 ていうか、ダンジョン探索者でお世話になってない人はいないレベルだよ!?


 雅ちん、ガチでお嬢様だったの……!?


 ゴメン……ぶっちゃけ、そういうロールプレイしてるだけの子ってのもワンチャンあるかとまだ思ってた……。


「……何か、無礼なことを考えてらっしゃいませんこと?」


「ほぇ!? い、いや全然そんなことないよ!?」


 雅ちんのジト目に内心が見透かされてるようで、心臓がドキーンて高鳴っちゃった。


「まぁいいですけれど」


 コホンと咳払いする雅ちんは、見逃してくれたみたい。


「とにかく、龍造寺剛一郎(ごういちろう)の一人娘たるわたくしの誇りに賭けて……ダンジョンでの配分には私情を挟まず、正確に公正に行います」


 ……そう言うってことは、ホントは雅ちん自身も思うところはあるんだ。


 そりゃそうだよね。

 自分の方がずっと苦労して戦ったはずなのに、ポッと出でラストアタックを取った方が配分多くなるんだもん。


 それでも、そんな気持ちは少しも表に出さずに配分してくれたんだ。


「凄いね雅ちん、偉い偉い」


 心からの感心と一緒に、雅ちんの頭を撫でる。


「子供相手のような扱いをしないでくださる!? わたくし、貴女より年上でしてよ!?」


「えっ、先輩だったの……!?」


 ちょっと年下か、せいぜい同い年くらいだと思ってたのに……。


「学年は同じですけれど、貴女八月の生まれでしょう!? わたくしは七月ですので!」


「誤差レベルじゃん……」


 そんな風に頬を膨らませてると、ますます年下に見える……って、あれ?


「てかウチの誕生日、なんで知ってんの?」


「貴女がご自身でプロフィール欄に書いてらっしゃるからでしょうに」


「はえー。雅ちん、プロフ欄までキッチリ見るタイプなんだ」


 ウチはそういうの、全スルーなんだよなー。


「それは、貴女がライバルだからこそ……っ、なんでもありませんわ!」


 いや、全部聞こえてたけどね?


 ていうか、オタくんにも全然聞こえてたっしょ……って、んんっ?

 なんでオタくん、ちょっと良い顔でうんうん頷いてるの?


 まさか……ウチと雅ちんがあくまで『ダンジョン探索者として』ライバル視し合ってて、切磋琢磨してる様子に『師匠』として満足してる……とか……?


 ははっ、そんなわけないよね……今どきそんな、鈍感系主人公じゃあるまいし……。


 と、ともあれ……。


「ん……わかった、変に突っかかっちゃってゴメンね。これ、ありがとっ」


 今度こそ納得と共に、ウチは分配してくれた取り分を受け取った。


「別に、お礼を言われる筋合いもありませんわ」


 プイッと顔を逸らす雅ちんだけど……照れてる? 照れてる?


 あはっ、可愛い~!


「……なんですの?」


「にひっ、なんでも?」


 横目で睨まれても今はもう全然怖くないから、笑って返す。


 けど、あんまりからかうのも良くないよね。


「そうだよね、雅ちんからすればこんなのあってもなくても一緒みたいなもんだしね」


 ウチ的には、このレベルのドロップ品といえばかなりの大金だけど。


 お嬢様なら、同じくらいのお小遣いを毎月もらったりしてるのかも?


「あら、そんなことはなくてよ?」


 かと思えば、雅ちんは片眉を上げる。


「わたくしからしても、これは大変良い稼ぎですもの」


 さっきのロックレザーを大事そうに抱えてホクホク顔を浮かべる雅ちんは、冗談を言ってるわけではないみたい。


「わたくしのこの装備は、両親が買い与えてくれたものですの」


 ウチの疑問を感じ取ったのか、雅ちんは自分のアーマードレスと丸盾に視線を落とす。


「過保護な親だとお思いでしょう?」


 その顔に浮かぶ笑みは、苦笑気味のものだった。


 別に、過保護だとかは思わないけどなー。

 大事な娘さんがダンジョンに行くっていうなら、精一杯の安全を与えたいと思うのは当然なんじゃないかな?


 ていうかむしろ、良くダンジョン行くのを許してくれたね?


「ダンジョン探索者になることは、わたくしの一生に一度のお願いでしたの。年に一度くらい発生するような類のものではなく、本気の本気で一生に一度の、ね」


 これも、ウチの考えを感じ取ってのものなんだろう。


 ウチと雅ちん、もう通じ合っちゃってる?


「……また、何か無礼なことを考えてません?」


 ほら、やっぱり通じ合ってるー。


「ともかく」


 コホンと一つ咳払いしながら、私に向けてたジト目を逸らす雅ちん。


「ダンジョンに潜ることを許す条件が、これらの装備を身につけることでしたの」


 もう一度装備に落とされた目には、今度は慈しみが溢れて見える。


「条件というか、餞別というか……わたくしが曲がりなりにもここまでやって来られたのは、間違いなくこの装備のおかげです」


 ウチが考えたようなことは、当然雅ちんも自覚してるよね。


 それを恥じるとかじゃなく誇りに思ってるっぽいのは、とっても雅ちんらしいと思う。


「それ自体に恥じることは何もないと思っていますけれど……ダンジョン探索者になる以上は、自らの稼ぎは自らで得るべき。当然のことですわよね?」


「ん、そうだね」


 本当に心から言ってるんだろう雅ちんに、ウチも同意を返す。


「装備は甘んじて受け取りましたけれど、それ以外の資金援助はおこづかい的なものも含めて一切受け取ってはおりません。他にバイトなどをしている余裕もありませんので、こうしてダンジョンで得る稼ぎが自由に出来るお金の全てなのです」


「そっか、じゃあウチとおんなじだね」


「そうですわね」


 ウチの笑顔に、雅ちんも微笑みを返してくれた。

 実際、この点においてウチと雅ちんの間に何の差もないんだと思う。


 ……けど、それはそれで疑問が浮かんだ。


「でも、それなら雅ちんはその稼ぎを何に使うの?」


「わたくしにとって、この上なく重要なものですわ」


 ウチの疑問に対する回答は、そんな曖昧なものだった。

 それをキメ顔で残して、雅ちんは今度こそ踵を返す。


 その背中を見送りながら、もう少し考えてみた。


 より深い階層に進むにつれて大きくなる稼ぎで装備を新調して、新調した装備でより深い階層に進んでいく……っていうのが、一般的な探索者のフローだと思うけど。

 雅ちんの装備は、少なくとも一般に流通してる範囲じゃ最上級のもの。


 買い替える先はたぶんほとんど存在しないと思うし、仮にあったとしてもこの階層の稼ぎでどうにかなるもんじゃない。

 逆に、消耗品の類で全額使い切るのはもっと浅い階層の話だし……ホントに、何に使うんだろ?


 ウチの稼ぎはほとんどが『ガチャ』に消える運命なわけだけど、雅ちんの『アイテム性能倍加』も代償にお金が必要だとか?

 でも、さっき使ってた時はそんな様子なかったし……ウチとかオタくんみたいな代償が必要なタイプってスキルの効果に幅があって、『倍加』みたいな効果幅固定で代償が必要なパターンは聞いたことがない。


 ……まさか、オタくんみたいに無駄に浪費してるわけでもないよね?

 雅ちんは、その辺りも必要性とのバランスをキッチリ考えるタイプだと思うけど……いやまぁ、オタくんだって別に無駄にしてるつもりはないんだろうけどさ。


「そうそう、ダンジョンモスキートってクソでかくて気持ち悪いですよねー。しかも、普通に致死量の血を吸ってくるしさ。え? 寝てる間に吸われたことある? ははっ、成仏してくださーい」


 雅ちんの散財先に思いを馳せていた耳に、オタくんの声が届く。


 いつの間にか、エンディング雑談トークに入ってたみたい。


「おっ。エレガンスドラゴンさん、いつもスパチャありがとうございまーす」


 何とは無しに視線を向けると、オタくんが手にするタブレット上でちょうど赤い色の目立つチャット欄が目に入ってきた。


「うっわ、すっごい額……」


 そこに記載された金額に、思わず呟きが漏れて出る。

 このロックレザーを、1部位分換金したくらいあるんじゃない?


 ウチと雅ちんが散々苦労して手に入れたような額を、ポンとスパチャしちゃうなんてさー。

 世の中には、お金持ちがいるもんだねー。


 ……………………。


 ………………。


 ……。


 ……んんっ?


「はい、それではまた次回。お疲れ様でしたー……ふぅ」


 ウチがとある疑念を抱いたのとほぼ同時、オタくんの配信も終わった様子。


「あのさ、オタくん」


 小さく息を吐いて配信モードからプライベートモードに切り替えているオタくんへと、おずおずと話しかける。


「最後の、スパチャしてくれたって人……なんて言ってたっけ?」


「あぁ、エレガンスドラゴンさん?」


 そう……エレガンスドラゴンさん。

 オタくんの配信を見れば、大抵は見かける名前だった。


 それはもう、相当前の配信からずっと。


 エレガンス……日本語に訳すと『優美』とか『上品』とか、あと……『雅』、とか?

 ドラゴンは、言うまでもなく『龍』。


 そして、さっきのドロップ品とちょうど合致するくらいのスパチャ額。


「それって……」


「あぁ……」


 ウチの言わんとすることを察したのか、オタくんが微苦笑を浮かべる。


「つまりは、まぁ……そういう人なんだ」


「そうなんだ……」


 オタくんの、ずっと前からのファンで。

 だけど、本人の前ではそんな風に見せなくて(オタくん本人が気付いてないとは言っていない)。


 雅ちん自身は、オタくんのライバルを自称していて。

 ウチのことを、ライバルと見なしてて。


 なるほど、そういう人(・・・・・)なんだなって……。


 そう察したウチの顔にも、たぶん微苦笑が浮かんでるんだろう。

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