第12話 ギャル、お嬢様と理解し合う
競い合うように……というか実際、競い合って。
卯月さんと龍造寺さんは、ボスに立ち向かっている。
最初はどうなることかと思ったけど、思った通りに二人の相性は良いみたいだ。
細やかな気遣いが出来るけどちょっと慎重すぎるきらいもある龍造寺さんに、思い切りは良いけど若干大雑把なところもある卯月さん。
二人で戦えば、互いに足りないところが補い合えるはずだ。
そして、それは『仲間』って形でしか実現出来ないものじゃない。
競い合い相手に先んじようとする、『ライバル』って関係でも同じ結果は生み出せる。
龍造寺さんは──理由は不明だけど──卯月さんのことを最初からそんな風に見ていたようだし、今は卯月さんもそれに応えている。
教え子同士が切磋琢磨してるところを見るっていうのも、良いもんだな。
なんて。
意外と、教えることの喜び的なものも見出し始めている気がする俺だった。
♥ ♥ ♥
隣で戦っているうちに、雅ちんのことが徐々に理解出来るようになってきたと思う。
その感情の種類と向く先、それから戦闘スタイルってやつも。
雅ちんは、オタくんの亜種……っていうか。
言葉を選ばず言えば、劣化版オタくんって感じ?
最初に見た時から感じてたことではあるけど、やっぱり雅ちんの装備は相当に良いものだと思う。
あんまり詳しくないウチでもわかるくらいの、超一級品。
たぶんだけど、市場に出回る中じゃ最上位レベルじゃないかな。
オタくんが普段使ってるスパチャ産のやつは『ピーキーだけど性能は市場に出回る最上位レベル』って感じだから、純粋に性能は同程度で遥かに扱いやすいって感じだと思う。
もちろんそれでも扱うには相応の技量は必要で、雅ちんは十分にそれを持ってるように見えた。
まして、『アイテム効果倍加』で強力になるほど難易度は上がるはず。
なのに装備に振り回されてる感じは全然なくて、素直にリスペクト出来るよね。
ただ、オタくんのいつもの……「これがスパチャの力です」は『言ってるだけ』なのに対して、雅ちんの戦い方は正真正銘の武具依存って感じ。
本人の実力だけで言うと、ウチとどっこいってとこじゃないかな。
ボスを殴る──文字通り、篭手で殴ってる──雅ちんの拳は、相手の攻撃を弾きながら弱点にまで届いてるけど。
たぶんウチが使ってるような普通程度の店売り品を装備してたなら、たとえ『倍加』してても打ち負けると思う。
ちょいちょい避けきれずもらってる一撃一撃も、ウチと同じ防具だときっと致命傷。
もちろん、それが悪いことだって言うつもりなんて全くない。
雅ちん自身が稼いでるのか、お父さんお母さんのお金なのかは知らないけど……どっちにしろ、その装備を手に入れられるっていうのも実力のうちだと思うから。
ただ、ウチは同世代の探索者が身の回りにいなくてさ。
……うん、まぁ、オタくんは歳こそ同じだけど、あれはどう考えても参考にならない。
だから、初めて自分に近い存在を間近に感じられて。
にひっ……なんだか、楽しくなってきちゃったかも!
◆ ◆ ◆
隣で戦っているうちに、わたくしは卯月さんのことを徐々に理解して参りました。
最初に彼女を見た時──それは先程のことではなく、初めて直孝様の配信に彼女が映った時──から見抜いていた、直孝様への感情に関してやはり間違っていなかったこと。
それから、その戦闘スタイルについても。
端的に申し上げれば……この女、やべぇですわ!?
実力そのものは、わたくしとどっこい程度と言えましょう。
だからこそ、戦慄を覚えます。
わたくしは、超一級品の装備を用意し万全を期してこの階層に挑んでいるのです。
それでも、文字通り決死の覚悟が必要なのにも拘らず。
卯月さんはわたくしと同程度の実力でありながら、裸同然の装備──卯月さんとしては、精一杯の装備を用意しているつもりではあるのかもしれません。だから粗悪品でこそないものの、けれど極一般的な市販品ではあります──で挑んでいるのです。
正直、正気の沙汰とは思えません。
普通であればこの130層に到達するより遥かに早く、『終わり』を迎えていることでしょう。
それでも卯月さんがここまで生き残っているのは、偏に彼女のスキルゆえと言えます。
今日ここまででも度々見せている、『ガチャ』とかいうスキル。
これは『当たり』を引いた場合、明らかに実力以上の成果を引き寄せる類のものです。
そして逆に言えば、『当たり』を引けなければ一巻の終わり。
実際、先程『分身』か何かの効果を引き当てなければ致命の一撃を到底避けられてはいなかったでしょうし、明らかに威力が数倍にはなっていると思しき刺突で邪魔を弾き飛ばしながら弱点を攻撃出来ていなければ詰みルート一直線だったでしょう。
最初は、直孝様が傍におられるがゆえのスタイルなのかと思っていました。
ピンチになっても、助けてもらえるからと。
男性の存在に依存していながらそれを恥じることもなく、むしろ誇らしげですらある卑しい女なのだと……あるいは、そう思い込みたかったのかもしれん。
しかし彼女の過去の配信をアーカイブで見て、すべてを悟りました。
彼女はニュービーの頃から一貫して──直孝様と一緒に攻略するようになるまでは──ずっと、ソロでこのスタイルを続けていたのです。
どころか、これまでのダンジョン探索はそのほとんどがチャレンジ攻略と呼ばれるもの。
そんなもの、阿漕なギャンブルに挑み続けているようなものですわ。
それも、ベットするのは己の命。
配信で、卯月様は直孝様の戦闘スタイルをクレイジーだなんだとおっしゃっていますが………………いえ、まぁ、それ自体はわたくしとしても否定出来からぬところではありますけれど。
わたくしからすれば、卯月様も同じく……いえ。
卯月様の方が、よほどクレイジーではありませんこと……!?
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