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第三話:止まない雨

雨だと言うのに普段とあまり変わらないペースで走っていると、突然、MT-07のバックミラーが全て黄色になった。その直後、身体ごと後ろにグンと引っ張られる。一瞬、ハンドルがブレるが安定を保つ。

俺の30年前のカッパが突然爆発したのだ。胸部の合わせのベルクロがはがれて前から風が入ってパラシュートと化しいた。バサバサと音を立てて暴れていた。

一応、走れる程度ではあるので、奴の09の前に出て、状態を見せる。そして、左にウィンカーを出してバイクを停めた。

「ギャハハ、なんだお前のカッパ、使えねーな」と奴。

「昔のライダーっちゃ、こういうモンだろ、ハハハ」と笑い合った。

「しゃーない、ここからは濡れてくよ」と俺が言う。

「だから、新しく買えば良かったのに」などと笑われる。


まぁ、なんだかんだと雨のツーリングもトラブルのツーリングも、楽しいものだ。

状況が悪ければ悪い程、楽しくやる。それが昔からの俺と奴の遊び方なのだ。


俺はカッパをたたみもせず、丸めてサイドバックに詰め込んで、また走り出す。


走り出すと奴が、やたらと右手を気にしている。信号で停まる。

「どうした?なんかアクセルがおかしいのか?」と聞くと

「いや、Bモードにしていただけだよ」と奴が答えた。

「ん?Bモード?パワーが欲しくて09にしたんじゃなかったのかよ」と俺が言うと「雨だし危ないだろ」と応える。


MT-09にはAモード、スタンダード、Bモードと言う3つのモードが付いている。

パワーが欲しいなら間違いなくAモードを使うし、MT-09に乗るのならばAモードを使わなければ、本来の09を味わえない。


いくら雨とは言えBモードでは09の意味がないのだ。


そう言えば、昔、夜の心霊スポットで、俺が歩いて奴の車を脅かしたら、夜中の山の中に俺一人、置き去りにされたっけ。


俺は理屈ばかり先行するので心霊など信じていない。奴は本能に忠実な分、ビビりーなのだ。「怖いもんは怖い」と言う。



奴の先行で犬吠埼まで到着した。


カッパを着てはいなかったが、ジャンバーはオールウェザーだったので、上体はあまり濡れていない。バイクに乗っている足はステップまで余裕があり、膝が折れているので、腿はあまり濡れずに膝下だけがびしょびしょだった。


少し歩きづらかったが、軽くメシを食って、軒下のベンチで奴は一服。俺は缶コーヒー。


犬吠埼を後にして帰途に着く。帰りはR51回りで帰る事にした。国道の一本道なので迷う事はない。だから俺が先行になる。


那珂湊に着く頃には、雨も上がっていた。


バックミラーの中で奴が軽く右手を上げる。俺はそのまま海沿いを、奴はそこから内陸に向けて別れる。特に会話がなくても手を振る事で「違う道を行く」と言う合図なのだ。


雨も上がりすでに夕方だ。赤い夕日に染まる水溜りが目に映る。きっと奴も同じように夕日の水溜りを見ているに違いない。


俺と奴の道は、それぞれ近づいたり離れたりする。でも直角に交差する事はない。走り続ける限り、また近づいたり離れたり。


何十年か振りのこんな雨の日のツーリングもなかなか面白かった。俺は意外に雨が嫌いじゃないのかも知れない。



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