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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第三章 海で遊ぼう

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第39話 ふたりの雨宿り

「ええと、なんか色々出てたけど、急にやることが増えたな」

「……こういうのはだいたい、クランメンバーで手分けしてやるから」

 うちは人いないからなあ。

 まあ、いきなり新メンバーとかいって何人も連れてこられても、俺が脱落しそうな気がする。


「……待って、ログを表示する」


――拠点施設【柵】が設置可能となった!――

「柵って必要? 今もテントだけで置いてきたけど」

「……たまに襲撃イベントがあるかもだけど、普段はあんまり襲われない」

「あんまり?」

「……あと、クランハウスが街の中にあるなら必要ない」

「じゃあ、優先度は低いかな」

「……ん」


――拠点施設【四阿(あずまや)】が設置可能となった!――

「《《あずまや》》って公園なんかにある屋根とイスだけの施設だよな」

「……ちょっとした休憩とか、雨の時の作業スペースとしても使える」

「夕立も来るらしいし、余裕があれば作ってみるか」


――拠点施設【物置小屋】が設置可能となった!――

「持ちきれないアイテムなんかを入れておけばいいのか」

「……キャラクターレベルが上がれば、アイテムボックスは大きくなるけど、死に戻りとかしたらランダムで一部落とす可能性がある」

「大事なものも置いておくべきか。いや待てよ、小屋が作れるんなら寝泊まりもできるんじゃ……」

「……物置は寝るのに向いてないからHPもMPも満腹度も回復しないよ」

「極端な設定だなあ。まあ、設定なら仕方ないか」


――拠点施設【宿屋】が設置可能となった!――

「誰が泊まるの、それ」

「……外から来たお客さん」

 いやいないだろ。

「自分たちで泊まるのは?」

「……できるけど、回復にはお金取られるから、わたしたちだけだと採算取れないと思う」

「当面いらなそうだな」


――拠点施設【正門】が設置可能となった!――

「正門も必要?」

「……色々機能はあるけど、ひとまず重要なのはファストトラベル」

「行先は?」

「……自分たちの拠点間を移動できるだけ」

「つまり、森のほうにも門を作らないといけないんだな」

「……あっちにまた歩いて戻らないといけないけど、先にこっちだけ作ろう」


――拠点施設【錬金釜】が設置可能となった!――

「……これ多分、最優先事項だと思う」

「わかった。ひとまず最後まで見よう」


――拠点施設【畑】が拡張可能となった!――

――拠点施設【果樹園】が設置可能となった!――

――拠点施設【ため池】が設置可能となった!――

「これはまた森のほうに帰ってからだな」

「……ん」


「で、ポイントは……」

「……2つぐらいは施設が作れるポイントはあるけど、ほかに資材やお金が必要」

「錬金釜をまず作るか」

「……錬金釜は、ポイントとお金で購入できる。いつもお金出してくれてるから、今回は私が出すよ」

「あ、ありがとう」

「……それと、設置場所が必要」

「テントは狭いな。物置小屋か四阿(あずまや)がいるかな」

「……物置は作業場じゃないから」

「四阿も作業場じゃないけど」

「……施設はそれぞれ役割があって、それ以外のことは制限される。そうじゃないと、自由度が高いからって倉庫とか鍛冶場とかお店とかで寝る人がいるから」

「開発中に何かあったの?」

「……そ、それは企業ひみつ……で、四阿はそのあたりの設定がゆるくて、寝る以外は色々できるようになってる」

「物置と四阿に必要なものは?」

「……それは施設アプリから確認できる」


拠点施設の解放素材[物置小屋]

・材木 ×50

 材木は樹種を選ばない


拠点施設の解放素材[四阿]

・材木 ×20

 材木は樹種を選ばない


「材木は森にいるときに用意してた。物置小屋には足りないが、四阿なら作れる」

「……じゃあテントの横に作る?」

「高台とかに作ろうかと思ったんだが、どうだろう」

「……波とかは来ないと思うけどな……ゲンに任せる」

 というわけで、海から少し離れた安定していそうな高台に四阿を作ることにする。

 テントも後でこっちに移動できたらしようかな。


 候補地を探すうちに辺りは暗くなってきた。

 夕暮れにはまだ少し早いが、山のほうから流れてきた灰色の雲があっという間に広がり、真夏の空を覆い隠そうとしている。

 砂浜近くにまばらにある林から、甲高い声が聞こえてきた。


『カナカナカナカナカナカナカナカナ』

「……なんだっけこの声? セミ?」

「ヒグラシだよこれ。夏の夕暮れになくセミだけど、突然の雨で暗くなると、間違えて鳴くこともある」

 遠くの山から聞こえてくるなら、風情ふぜいがあっていいんだけどな。夏の夕暮れって感じで。


「……うるさい」

 近くで何匹も鳴かれると、会話もままならない。

「現実でもこんなもんだよ」

 近付かないと話ができないが、やっぱり落ち着かないな。


「……雨降る前に早く設置しよう。後で移動もできるから」

 至近距離から背伸びをして、カズハは俺の耳元で声を上げる。

「そこまでしなくても聞こえるから、もうちょっと離れて!」

 や、やりにくい……。


 ぽつん。

 俺の頭に冷たいものが当たる。


「いかん降ってきた」

 急いで設置場所を探し、ガイドフォンから四阿の作成を選択する。


 俺のガイドフォンから、材木が吹き出すように 出現し、自動的に加工され、四阿の形に組み上げられていく。


――拠点施設【四阿(あずまや)】を設置した!――


「急いで中に!」

「……ん」

 その時には、すっかり雨脚が強くなっていた。


 ヒグラシも他のセミもすでに鳴きやんでいたが、その代わりに激しさを増す雨音が互いの声をかき消そうとする。

 土砂降り、というやつだ。快晴から十数分で、手の届く範囲しか見えなくなる。そこから先は、薄い灰色の雨の壁だ。


 だから、会話のためには、またふたりの距離が近くなる。

「……ゲン」

 何やら、いつになく真剣な顔で、カズハが俺を呼ぶ。


「……あのね、残念だけど、このゲームでは雨で濡れたシャツが透けたりすることはないんだよ」

 今の装備は、水着にTシャツを着けただけの状態。

「何かと思ったら、別に期待してないから。むしろそんなことばっかり言ってたらまた女性プレーヤーが減るんじゃないか」

 期待はしていないが、そんなことになったらなったで、また気まずいことに。


「……そう、かなあ」

 ときどきこの人、一般的な女性とは感性が違うのではないかと思うこともある。


「しかし、これじゃたいしたこともできそうにないし、今日はこれでログアウトする?」

「……あ、待って。雨の時は、雨でしかできないことを、しよ?」

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