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彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第三章 海で遊ぼう

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35/60

第35話 海に来た

 砂の中から突如現れた大蟹おおがにを観察する。


 この前のカメレオンよりは小さいし、まだ楽に戦えるかも。

 一瞬そんな感想を抱いたが、全身をおおう鎧のような甲殻は、こちらの攻撃を受け付けなさそうにも感じる。


【ナイトクラブ(仮称)】 魔獣 Lv.8


「仮称!?」

「……まだβテスト中だし、モンスターは数が多いからまだ未完成のものも残ってるみたい」

 言っちゃあ悪いけど、ネーミングセンス……。


「……名前とか設定も募集しているようだから、応募してもいい、よ」

「そういう話は、敵を倒してからな」


 振り上げられた両腕は、現実世界でも見たことのあるカニの仲間、シオマネキのように、左右の形が異なっていた。

 右腕はシオマネキ同様に、いやそれよりも細長く伸び、先端は鋭く尖っている。

 一方、シオマネキでは小さいはずの左腕は平たく変形し、その腹を覆い隠すようになっている。これは、現実世界におけるカラッパというカニの仲間に似ていた。


 右腕が槍、左腕が盾。

 Night clubじゃなくてKnight crabだよな、これ。


 まあいいや。先手必勝。

「銀の矢よ、(つらぬ)け。【シルバリィボルト】!」

 カニを|指した右手の先から、銀の矢が飛び出す。

 カニはほとんど動くこともなく、盾と化した左腕でそれを受ける。


 1。

 だめだ、ダメージにならない。


「……鬨の声あげよ……[ウォーハンマー]」

 カズハも戦鎚を取り出し、殴りかかる。


 10。

「……か、硬っ」

 硬い相手には刃物より鈍器の方が有効なこともあるが、こちらのレベルが低いのかダメージを与えられない。

 敵のHPバーも、ほんの少し減っただけ。


 選択肢は、まずふたつ。


 攻撃を繰り返して少しずつHPを削るか、防御力をなんとかして大ダメージを与えるか。

 前者の場合、魔法だけでなくスキルを使ってもMPは減るので、途中でスキルや魔法が使えなくなって詰みそう。

 後者の場合、敵の防御力を下げるか、こちらの攻撃力を上げるか、あるいは急所を突くか。

 現実のカニを考えても、急所は設定してあると思うんだがなあ。


 だが……ターン制というわけでもないが、レベルで上回る相手に対してずっと俺たちのターンというわけにもいかない。

 カニが槍のような右腕を大きく振りかぶる。

【スウィーピング】

 昆虫学の世界では採集法として知られる言葉ではあるが、多分そうではない。

 なぎ払い。範囲攻撃だろう。


 カニのハサミが震える。大振りの攻撃のため力をためているのか。

 ゲーム的には、不慣れなプレイヤーに対応のチャンスを与えるためなのかもしれない。


「【インスタントアーマー】」

 カニが力をためている間に、俺は金行の呪文名だけを口にする。


 一部の防御魔法やリアクションスキルは、詠唱を破棄、というか省略して使用できる。

 要は防御の時に、延々と詠唱していたら間に合わないという話だ。

 これには敵のターゲットになっていること、MPの消費が3倍になるという条件がある。


 ナイトクラブ(仮称)のハサミが薙ぎ払われる前に、俺の体が金属鎧に包まれる。木行にペナルティがあるという話だったが、まだ金行しか使ってないから問題なし。

 そして、カニのハサミを俺を捕らえ、今作ったばかりの鎧が砕け散る。これは外付けのHPのようなものだ。一撃で全て削られるのは予想外だったが、少し残ったダメージを自分本来の防御力で受け切り、ダメージは0。

 これはすなわち、敵の範囲攻撃を途中で受け止めたという形になる。一緒に狙われ、俺のあとにダメージを受けるはずのカズハには、攻撃判定自体が発生しない。MP消費は激しいが、それ以上の効果はあった。


「ゲン!」

「攻撃に専念しろ!」

「にゃああああぁぁ!」

 そして、カズハが鳴いた。

 何それ。ネコの遠吠え?


【ウォークライ】

 すぐさまスキル名と、攻撃力アップを示すアイコンが彼女の頭上に表示される。

 ゲームでたまにある、戦士系が雄叫びとか(とき)の声を上げて、自分の攻撃力などを上げるスキル。

 そうか。昔のゲームだとキャラクターがやってくれるが、VRだと自分が叫ばないといけないんだ。


 まずは戦士にバフ盛るか。

 なお、バフとは一時的な能力強化を指す。念のため。


「勇気の香りをもって、力を授ける【パワーインセンス】」

――呪文を間違えた!――

 お香の香りで、味方を強化する木行の魔法。のはずが、呪文の効果ではなく、詠唱失敗を示すメッセージが目前に現れる。


「あれ!?」

「……勇気じゃなくて勇猛」

「勇猛の香りをもって、力を授ける【パワーインセンス】」

 カズハの言葉に従い、再詠唱する。

 今度は成功して、右の手のひらに煙の塊のようなものが生まれた。いや、インセンスだからお香の香りみたいなもんか。それをカズハに向けて投げると、攻撃力上昇を示す2つ目のアイコンが、彼女の上に追加された。


 しかし、カズハは多種多様な魔法を丸暗記してるんだろうか。確かに記憶力がいいとは前から思っていたが。


「……えい」

 そしてカズハの攻撃は、カニの盾で受け止められる。受け止めるといっても、18というダメージは出ている。やはり硬いな。

 HPは約10分の1しか減っていない。


 さて、どうしたものか。

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