表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
彼方の島の夏休み ―不思議系少女と過ごすネットゲームの夏―  作者: 広瀬凉太
第三章 海で遊ぼう

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

34/60

第34話 海に行こう

 トウモロコシは皮を剥いて水洗いし、焼いて塩を振る。

 醤油とバターが欲しいな。


――[焼きトウモロコシ(塩)]を4個作った!――


 キュウリはアクを抜き、塩をすり込む。

 味噌とか欲しいな。


――[塩キュウリ]を4個作った!――


「調味料も欲しいが、塩も残り少ない」

 最初の支給品の中に塩が入っていたのだが、普通に料理してたらあと二、三日でなくなりそうだ。


「……おいしいけど、お肉も食べたい」

「狩りも考えるが、魚でもいいか?」

「……お刺身?」

「川魚の刺身は難しいからなあ。塩と魚を手に入れるためには……」

「……じゃ、海に行く?」

 カズハの提案に、無言でうなずく俺。


「その前に、なんか武具店ができたとかメッセージがあったと思ったが」

「……ん。今用意する」

 俺も海で釣りとかしたかったが、なかなか進まないな。


 目前に、先日と同じような販売用のウインドウが開いた。違うのは、その品揃え。


「拠点に店舗とかができるわけじゃないんだな」

「……NPCのお姉さんの店の方がよかった?」

「い、いや、そういう意味では……カズハの店で、いやカズハの店がいい」

「……ん」


 初級装備ばかりだが、ゼロから作らなくていいのはありがたい。

 それでも先立つものは必要なので、食料とかの当面必要そうなものを除いて売ることにする。

 採集した虫を売ると言ったら、さすがに嫌そうだったが、直接触れるわけじゃないし、仕方ないよな……?


右手:[トネリコの杖]

左手:同上

頭:[新米魔道士の帽子]

腕:[木綿の手袋]

胴:[木綿のローブ]

腰:同上

足:[皮のブーツ]


 ひとまず、駆け出しの魔法使い的な装備は整った。


右手:[トネリコの杖]

左手:同上

頭:[新米魔道士の帽子]

腕:[木綿の手袋]

胴:[木綿のローブ]

腰:同上

足:[皮のブーツ]


 ひとまず、駆け出しの魔法使い的な装備は整った。


[トネリコの杖]  ★★

種別:武器・魔道具/杖

攻撃力:5  重量値:3  耐久値:30/30

MP追加(+30)

解説:トネリコの木の枝と魔石から作られた杖。花言葉は『威厳』『偉大』など。その言葉にふさわしい者になれとの思いを込めて、新人魔導士に贈られる。


「フレーバーテキストはともかく、MP追加はありがたいな」

「……杖はだいたいMP追加が付いてる。パソコンに外付けするメモリみたいなもの」


 他のものも、店売りの初期防具なのでたいした効果はない。防御力と魔力とMPが少し増える程度だ。


「杖って棒と魔石で作れるんじゃないか」

 魔石はこれまでの戦闘で、ドロップアイテムとしていくつか入手済みだ。

「……棒ならばリアルのスキルがあれば作れそうだけど、ゲンは魔法の杖作ったことある?」

「俺を何だと思ってるんだ」

「……思ったより何でもできる人」

「魔法の杖は知らん」

「……だから魔法職人とか錬金術士とかの領域になる」

「その辺は、またゆっくり考えよう」

 転職計画とか、すぐに決めることでもないだろう。


「……でも、これでやっと冒険者らしくなったね」

「そうだな。田舎から都会に出て、はじめてギルドに登録した感じだが」

 戦士のカズハは、軽装の金属鎧をまとっている。

 調べていないが、それもどことなく駆け出しっぽい。


「……さあ行くぞー。わたしたちの冒険は、はじまったばかりだー」

「いやそれ打ち切り漫画の最後のセリフ!」


    ◆


 さて、海に行く、とは言ったものの、乗り物もないのでいきなり海にはいけない。

 拠点であるクスノキの広場から、海まで歩いていく必要がある。


「……で、どうやっていくつもり?」

「地図は行ったところしか表示されないし、どっちが海かもよくわからんが、川沿いを下って行くか」

「……大丈夫? ヘタに川を下ると危ないって聞いたことあるけど」

「それは山で遭難しかけた時の話だ。そういう場合、川の両側は谷間の急斜面のことが多いからな。そんなところを下っていったら、滝に遭遇して動けなくなる可能性が高い」

「……この前行った川だったら?」

「あれはまわりが平原だし、万一滝にあっても迂回できるだろ。環境的に中流っぽいが、そう遠くないうちに海に出そう」

 というわけで今は、森の中の道を抜け、川に向かって歩いている。


「何か、暑くなってきたか?」

「……何か、夏本番、って感じ」

「それだけじゃないな。森の外に出たから、遮るものがないんだ」

「……このゲーム、状態異常として熱中症もあるから、気をつけないと」

「熱中症って、具体的にはどうなるんだ」

「……各種ステータスの減少と、MPの使用制限。その結果、一部のスキルが使えなくなることも」

「対策は?」

「……水分と塩分の補給、体を冷やすこと、など」

「現実世界と変わらんな。川に入ってみるか」

「………………えい」

「うおっ!? いや水かけるなら一言言ってからにしてくれ」

「……ね、熱中症対策だから」

「ね、熱中症対策だなら仕方ない、って何か水行のスキルとか使ってない!?」

「……え、いやそんなことは……」


――アクションスキル【水掛け】が習得可能となった!――


「いや何に使うのこのスキル!?」

「……あははは」

 またテンション高いなこの人。


「おい、そんなにはしゃぐと危ないぞ」

 川の中って足場悪くて(すべ)りやすいんだから、と言う前に。

「んにゃあ!?」

 ほら滑った。


 手を伸ばし、二の腕のあたりを掴んで支えようとする。しかし、こちらも咄嗟(とっさ)のことなので足元がおぼつかない。

 結局お互いに支え合うような形になって……いや待て妙な雰囲気に……。


――ユニークミッション【48の夏イベント:水遊び】をクリアした!――


 突然視界の端にメッセージが出て、慌てて離れる。

「何か変なのが出た!」

「……変なのゆーな。これについては追々説明するから」


    ◆


 さらに、川沿いを下る。

 時々、一般モンスターを倒しながら。



【ブラウンディア】 動物 Lv.5


「……お肉……」


――[シカの毛皮]を1個手に入れた!――


「……お肉……」

「深く考えるな。次行こう次」


     ◇


【レッドボア】 動物 Lv.6


 ここでいうボアとは、ヘビ(Boa)ではなくイノシシ(Boar)のことだ。


――[イノシシの毛皮]を1個手に入れた!――


「……お肉……」

「物欲センサーってやつじゃないかこれ?」


    ◆


 戦闘とか採集とか、熱中症対策とかを交えながら、さらに下る。

 川は少しづつ広さを増し、流れは緩やかになってゆく。中流から、下流に近づいた(あかし)だ。

 懸念していた滝などに遭遇することもなく、出発から約三十分。

 砂の山に登れば、視界に青い海と白い砂浜がいっぱいに広がった。


「……海じゃあ……あ」

 急に変な言葉づかいになったと思ったら、噛んだだけか。


「……行こ」

 手首をつかまれ、誘われる。

 まあ、向こうからの接触も、これぐらいなら……。

 そう思った直後、砂浜の一部に不審な盛り上がりを見つけた。さらさらと砂が(くず)れる。その下では、何かが(うごめ)いているようで――。


「待った!」

 彼女の手首を握り返し、引き戻そうとする。


 今は戦士の彼女の方が力は強く、うまく引き戻せなかったが。


 俺たちの目前で、まるで間欠泉のように砂が吹き上がった。

 声を出した成果があったか、ふたりはそれに巻き込まれることもなく。


「……ふぇっ!?」

「またフィールドの解放クエストみたいだな」

 降り注ぐ砂から顔をかばう。カズハは……大丈夫そうだな。


「……えー」

 海のことで頭がいっぱいになっていたらしきカズハが、不満の声を上げた。


 砂の中から現れたのは、オレンジ色の甲殻におおわれた大型犬サイズの何か。声こそ発しないが、こちらを威嚇するかのように両腕を振り上げる。


 カニだな、これは。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ